「愛知は住みやすいと聞くけれど、高齢だと部屋を貸してもらえるだろうか」——名古屋やその周辺で住まいを探す方から、よくいただく不安です。愛知県には、他の大都市圏とはっきり違う特徴があります。この記事では全国平均をなぞるのではなく、愛知県の数字と、愛知県にある窓口だけを見ていきます。
愛知は「全国平均そのもの」の県——だから戸建ての感覚が通じる
大都市圏というと集合住宅ばかりを想像しがちですが、愛知県はそうではありません。住宅に占める一戸建の割合は51.0%、共同住宅は45.7%です[2]。全国平均は一戸建52.7%・共同住宅44.9%ですから、愛知はほぼ全国平均どおりの構成をしています。
これは東京都(一戸建26.3%)や大阪府(同39.8%)とはまったく違う姿です[2]。持ち家の割合も59.6%で、全国の60.9%とほぼ同じ[2]。愛知は「都市圏だけれど、住まいの形は全国並み」という、めずらしいバランスの県です。
探す側にとって、これは悪い話ではありません。集合住宅に絞らなくても選択肢が残るということだからです。平屋や低層の物件、庭のある借家も、都心部よりは現実的な候補になります。段差の少ない住まいを探したい方にとっては、選べる幅があるのは利点です。
空き家率11.8%——全国より低く、しかも上がっている
愛知県の空き家率は2023年で11.8%。全国の13.8%より低い水準です[1]。空き家が少ないということは、裏を返せば部屋が埋まっているということでもあります。
ただし5年前の2018年は11.3%でしたから、わずかながら上昇しています[1]。全国も13.6%から13.8%へ上がっており、愛知はその流れに沿った動き方です。
総住宅数は3,665千戸、うち空き家は433千戸あります[2]。数としては決して少なくありません。「愛知は空きが少ないから難しい」と身構えるより、全国並みに空きはあるが、待っていれば増えるという状況でもないと捉えるのが実情に近いでしょう。
窓口の半分が「福祉」の部署——愛知の相談先の特徴
国土交通省がまとめた居住支援協議会の一覧(令和8年6月30日時点・全国192協議会)によると、愛知県内には県の協議会に加えて7つの市協議会があります[3]。県全体の窓口は愛知県住宅供給公社(052-954-1356)です[3]。
市の窓口を並べると、愛知の特徴がはっきり出ます[3]。
- 名古屋市(住宅都市局住宅部住宅企画課)
- 岡崎市(都市基盤部住宅計画課)
- 一宮市(建築部住宅政策課)
- 豊田市(定住促進課)
- 瀬戸市(健康福祉部高齢者福祉課)
- 半田市(福祉部生活援護課)
- 蒲郡市(福祉部福祉課)
後ろの3市は、住宅の部署ではなく福祉の部署が窓口になっています。瀬戸市にいたっては高齢者福祉課そのものです。住まいの話を「暮らし全体の相談」として受けてくれる入口があるということで、健康面や身元保証の不安もあわせて相談しやすいはずです。
豊田市の「定住促進課」も特徴的で、住み続けてもらうことを前提にした部署が窓口になっています。
エリアで選ぶ愛知——名古屋市内/尾張/西三河/知多
愛知県は東西に広く、地域ごとに家賃も交通も変わります。相談窓口の分布と重ねると、次のように整理できます。
名古屋市内は地下鉄が東西南北に通り、名鉄・JR・近鉄も集まります。医療機関が多く、通院が続く方には安心です。家賃は県内で最も高くなります。
尾張(一宮・瀬戸など)は名鉄やJRで名古屋へ出やすく、家賃は市内より落ち着きます。一宮市・瀬戸市とも窓口があります。
西三河(岡崎・豊田)は自動車産業の集積地で、賃貸住宅の供給が厚い地域です。両市とも窓口があり、豊田市は定住支援に力を入れています。
知多(半田など)は名鉄河和線・JR武豊線沿いで、海に近い落ち着いた住環境です。半田市に福祉部の窓口があります。
1つの市に絞らず、窓口のある市を2〜3つ並行して当たると、1か所で止まらずに進められます。中京圏を広く見たい方は静岡県で高齢者・シニアが賃貸を借りるにはもあわせてご覧ください。名古屋へ通える範囲で県境を越えて探すなら、岐阜県でシニアが賃貸を探すコツ|共同住宅23.5%・持ち家73.7%の県での借り方も候補に入ります。
断られにくくするための備え
愛知でも、備えの中身は他の地域と変わりません。オーナーが最も気にするのは「万一のときにすぐ気づける仕組みがあるか」という一点です。
用意しておきたいのは、家賃保証会社の利用、緊急連絡先、そして見守りサービスです。安否確認の仕組みと、原状回復や家賃損失に備える保険をあわせて示せると、話が前に進みやすくなります。補償の範囲や上限額は商品ごとに違うため、契約前に内容を確かめてください。
保証人が見つからないときの進め方は保証人がいない高齢者の賃貸|家賃保証会社の使い方と選び方、準備の全体像は高齢者が賃貸を断られる理由と対策|シニアが部屋を借りるための5つの準備で説明しています。
愛知の場合、福祉部が窓口の市(瀬戸・半田・蒲郡)では、住宅の相談より先に暮らしの相談から入れるのが強みです。体調やお金の不安があるなら、そちらから話を始めても構いません。
まとめ:愛知は「戸建ても選べる」「福祉の窓口から入れる」
愛知県の数字が示すのは次の3点です。
- 一戸建51.0%・共同住宅45.7%・持ち家59.6%とほぼ全国平均どおり——集合住宅に絞らなくてよい[2]
- 空き家率11.8%は全国13.8%より低いが、5年前より上昇——極端に厳しくも、緩くもない[1]
- 県+7市に窓口があり、うち3市は福祉部署が担当[3]
65歳以上の人口は全国で総人口の29.3%を占め、過去最高を更新しています[4]。高齢の借り手はもう例外ではありません。
住まいの形に幅があり、暮らしの相談から入れる窓口もある——愛知はシニアにとって、選択肢を組み立てやすい県だといえます。
- 空き家率の推移(愛知県 11.3%→11.8%/全国 13.6%→13.8%。いずれも2018年・2023年):総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査』住宅数概数集計 表2「空き家率-全国、都道府県(2018年、2023年)」。stat.go.jp(速報PDF)
- 愛知県の総住宅数3,665千戸・一戸建51.0%・共同住宅45.7%・持ち家59.6%、全国の一戸建52.7%・共同住宅44.9%・持ち家60.9%(いずれも2023年):総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査』基本集計 結果の概要 付表「都道府県別の主な指標」。stat.go.jp(確報PDF・付表)
- 愛知県内の居住支援協議会(県+7市の計8か所)と連絡先、全国192協議会(令和8年6月30日時点):国土交通省『住宅確保要配慮者居住支援協議会について』。mlit.go.jp
- 高齢化率29.3%(2024年10月1日現在):内閣府『令和7年版高齢社会白書』。cao.go.jp