静岡県で高齢者・シニアが賃貸を借りるには|東西に長い県の探し方

「一戸建ての庭の手入れがだんだん大変になってきた」「子どもが独立して部屋が余っているので、駅の近くの小さな部屋に移りたい」——静岡県にお住まいの方から、こうしたご相談をいただきます。年齢を理由にオーナーが慎重になる場面があるのは事実ですが、静岡県には、この県ならではの追い風と、この県ならではの注意点があります。県は東西におよそ150キロ、伊豆半島まで含めると生活の形がまるで違う地域の集まりです。どのあたりで、何を優先して暮らすのかを先に決めておけば、シニアが暮らしやすい部屋は見つかります。この記事では、静岡県の公的データと地域の事情の両面から、部屋探しの進め方を整理します。

空き家率16.7%——数字の「中身」を見ると静岡の特徴が出る

まず量から確認します。総務省『令和5年住宅・土地統計調査』の基本集計によると、静岡県の総住宅数は2023年10月1日現在で177万4千戸でした[1]。2018年の171万5千戸から3.5%の増加で、全国の4.2%をやや下回るペースです[1]

目を引くのは空き家です。静岡県の空き家数は29万6千戸、空き家率は16.7%で、全国の13.8%を2.9ポイント上回ります[1]。ただし、この数字だけを見て「静岡は部屋が余っているから借りやすい」と考えるのは早すぎます。空き家は中身を分けて見る必要があります。

空き家のうち、賃貸用でも売却用でも別荘でもない、いわゆる使われないまま残っている住宅は静岡県に10万5千戸あり、その割合は5.9%。これは全国の5.9%とぴたりと同じです[1]。つまり、静岡県の空き家率が全国より2.9ポイント高い分は、まるごと「貸すために空いている住宅」「売るために空いている住宅」「別荘などの二次的住宅」で説明がつきます。全国ではこの部分が7.9ポイントぶんですが、静岡県では10.8ポイントぶんを占めている計算になります[1]

これは静岡県の地理を思い浮かべると腑に落ちます。熱海・伊東・伊豆や御殿場といった、全国有数の別荘・保養地を抱える県だからです。借り手を探して空いている住宅の層が全国より厚いという点は、これから部屋を探す方にとっては前向きに受け取ってよい事実です。

もっとも、放置された空き家が増えていないわけではありません。この「除く空き家率」は2018年には5.1%で、全国の5.6%を下回っていました[2]。5年で5.1%から5.9%へと、全国(5.6%→5.9%)より速いペースで上がっています[1][2]。県全体の空き家率も2018年の16.4%から16.7%へ上昇しました[1][2]。静岡でも、住まいの引き受け手を探している家は着実に増えています。

アパート・マンションは全国より少ない——だからエリア選びが効く

静岡県で部屋を探すときに、いちばん先に知っておいてほしいのがこの数字です。県内の居住世帯のある住宅146万8千戸の内訳をみると、一戸建が96万4千戸で65.7%、共同住宅は47万4千戸で32.3%にとどまります[1]。全国は一戸建52.7%・共同住宅44.9%ですから、静岡県はアパートやマンションの割合が全国より12ポイント以上低い県です[1]。持ち家住宅率も67.4%で、全国の60.9%を上回ります[1]

この構成が意味するのは、静岡では「賃貸の共同住宅」という選択肢が、地域によってかなり偏って分布しているということです。静岡市や浜松市の市街地、沼津・三島・富士といった東部の都市部には集合住宅がまとまってありますが、そこから外れると一戸建ての持ち家が中心の街並みになります。同じ県内でも、少し場所を動かしただけで候補の数が大きく変わります。

ですから静岡での部屋探しは、物件そのものを広く見て回るより先に、「どのまちの、どのあたりで暮らすか」を決めるほうが早く進みます。エリアを絞れば、そこにある集合住宅は限られた数になり、じっくり比べられます。同じように政令指定都市が複数ある県での探し方は福岡県で高齢者・シニアが賃貸を探すには?探し方と備えにも整理しているので、あわせて読むと考え方が掴みやすいはずです。

家賃の見当をつけるときは、全国の借家(専用住宅)の1か月当たり家賃が平均59,656円(2023年)であることが一つの目安になります[1]。ただし静岡市の中心部や浜松駅周辺と、天竜や伊豆の山あいとでは相場感がまるで違います。実際の予算は年金暮らしの家賃の目安|手取りから逆算する住まいの選び方のように、年金の手取りから逆算して決めるのが堅実です。

静岡の高齢のひとり暮らしは、これから急に増える

次に借りる側の状況です。全国の65歳以上人口は3,624万人、高齢化率は29.3%(2024年10月1日現在)となりました[3]。65歳以上の世帯員がいる世帯のうち高齢単身世帯は761万7千世帯・32.1%(2023年)で、過去最高です[1]

ところが静岡県は、この点で全国とかなり様子が違います。国立社会保障・人口問題研究所の『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』(2024年推計)によると、静岡県で75歳以上の方が単独世帯の世帯主である割合(独居率)は2020年で16.9%と、全国の22.4%を5.5ポイント下回ります[4]。三世代が近くで暮らし、持ち家に住み続ける形が、いまも比較的よく残っている県だということです。前の節でみた持ち家住宅率67.4%とも符合します。

ここは正直にお伝えしておきます。静岡では「高齢のひとり暮らしの方が賃貸を借りる」という前例が、全国平均よりまだ少ないのが実情です。不動産会社やオーナーにとって慣れた話ではない場面に出会うことは、他県より起こりやすいかもしれません。

ただし、その状況は変わっていきます。同じ推計で、静岡県の世帯主75歳以上の単独世帯は、2020年の9万6千世帯から2050年には16万9千世帯へ76.1%増える見通しです[4]。この増加率は全国平均の68.7%増を上回ります[4]。65歳以上の単独世帯も17万6千世帯から25万9千世帯へ47.2%増(全国46.9%増)と推計されています[4]。75歳以上の独居率も、2050年には23.6%まで上がる見込みです(全国は28.9%)[4]

いま前例が少ないことは、あなたの部屋探しがうまくいかない理由にはなりません。全国のデータでは、高齢者のいる世帯全体では借家に住む割合が18.2%にとどまるのに対し、高齢単身世帯では借家の割合が32.2%と、およそ3世帯に1世帯が賃貸住宅で暮らしています(2023年)[1]。「この年齢で部屋を借りるのは特別なことではないか」と気後れする必要はありません。

エリアで選ぶ静岡——東部・伊豆/中部/西部

静岡県は東西に長く、地域ごとに生活の形が違います。まずどのまとまりで探すのかを決めると、一気に整理しやすくなります。県全体の背骨はJR東海道本線で、これに東海道新幹線(熱海・三島・新富士・静岡・掛川・浜松)が重なります。

東部(沼津・三島・富士・富士宮・御殿場・裾野)は、JR東海道本線・御殿場線・身延線に加え、伊豆箱根鉄道駿豆線が三島から伊豆長岡・修善寺へ伸びるエリアです。沼津・三島は駅前に商業施設と病院がまとまり、新幹線で東京方面にも出やすい位置にあります。御殿場・小山は標高が高く、県内では珍しく冬の冷え込みと積雪を見込んでおく必要があります。神奈川県側と行き来しやすい地域でもあるので、横浜市・川崎市で高齢者が賃貸を探すには|窓口と供給量で選ぶ進め方とあわせて、県境をまたいで比べてみるのも一案です。

伊豆(熱海・伊東・伊豆の国・伊豆市・下田)は、伊豆急行線と駿豆線が生活の軸です。温暖な気候と温泉が魅力で、リゾートマンションを含む集合住宅の供給が厚いのが特徴です。前述した「別荘などの二次的住宅」が県の空き家率を押し上げている中身は、多くがこの地域にあります。一方で熱海・伊東は急な斜面に街が広がっており、坂と階段が生活に直結します。建物のエントランスまでは平らでも、そこからバス停や商店までが急な下り坂という物件は珍しくありません。

中部(静岡市・焼津・藤枝・島田・掛川)は、JR東海道本線に加えて、新静岡と新清水を結ぶ静岡鉄道静岡清水線が走ります。静岡市の葵区・駿河区の市街地は安倍川がつくった平地に広がっていて起伏が少なく、県庁所在地としての商業・医療の集まりもあります。静鉄沿線は駅間が短く本数も多いため、車を手放したい方には県内でも有力な選択肢です。清水区は港と丘陵が入り組んでいるので、同じ区内でも歩きやすさに差があります。

西部(浜松市・磐田・袋井・湖西)は、JR東海道本線と、浜松から西鹿島へ向かう遠州鉄道(通称「赤電」)、天竜浜名湖鉄道が軸になります。浜松駅周辺は集合住宅の供給が県内でも厚く、遠州鉄道沿線は駅の間隔が短いので、駅徒歩圏で探しやすい地域です。浜松市街の大部分は三方原台地の縁と平地に広がり、比較的平坦です。天竜区の山あいは事情がまったく変わるので、同じ「浜松市」でも別の地域として考えてください。西へ行けば愛知県との行き来も多くなるため、愛知県(名古屋)でシニアが賃貸を借りるには?探し方と備えもあわせて見ておくと選択肢が広がります。

静岡で覚えておくと役に立つのが、「県内のどこか」ではなく「静鉄沿線か、遠鉄沿線か、東海道線の駅前か」で考えるという見方です。静岡県は鉄道が海沿いの平地に集中し、そこから離れると路線バスと車が中心になります。免許の返納を考えている方ほど、この線引きが日々の負担を左右します。

温暖な気候と、細長い平地の街

静岡県は太平洋側の温暖な気候で、平野部の積雪はほとんどありません。これはシニアの暮らしにとって、はっきりした利点です。凍結した路面で転ぶ心配が少なく、冬の外出をあきらめずに済みます。暖房費の負担も、寒冷地に比べれば軽くなります。雪の多い地域との違いを知りたい方は北海道(札幌)でシニアが賃貸を探すには|雪国の住まい探しのコツを見比べてみてください。ただし前述のとおり御殿場・小山や天竜の北部は例外で、冬の備えを見込んでおくほうが安心です。隣接する県で冬の備えが前提になる地域の探し方は長野県で高齢者・シニアが賃貸を借りるには|空き家20.1%・共同住宅23.9%の県での探し方にまとめています。

地形の面では、静岡県の市街地は南の海と北の山にはさまれた細長い平地に、東西へ連なる形で発達しています。そのため市街地の中心部は概して平坦ですが、北へ一本入ると丘陵の裾にかかる場所が出てきます。同じ町名でも通り一本で歩きやすさが変わることがあるので、内見のときは駅やバス停から現地まで自分の足で歩いてみてください。坂の街と平らな街の違いは、年齢を重ねてからの暮らしやすさに確かに効いてきます。

もう一点、静岡で部屋を決める前に見ておきたいのが、住所単位でのハザードマップと建物の耐震性です。海沿いの平地に街が広がる県なので、津波や河川の浸水の想定はエリアによって差があります。お住まいになる市町のハザードマップを住所で確認し、あわせて建物の建築年(新しい耐震基準に沿って建てられているか)を仲介会社に尋ねておくと安心です。避難場所までの経路が、歩ける距離かどうかも見ておきましょう。

静岡県には、地区ごとの相談窓口がある

オーナー側の事情も知っておくと、相談の進め方が変わります。前述の社人研の推計によると、静岡県の一般世帯総数は2020年の148万1千世帯から2050年には135万世帯へ、8.8%減る見通しです(全国は5.6%減)[4]。世帯そのものが全国以上のペースで減っていくということは、貸す側にとっては借り手が減っていくということです。そのなかで75歳以上の単独世帯だけが76.1%増える[4]——静岡のオーナーは、この構図の中にいます。高齢の入居希望者を断り続ける経営は、これから成り立ちにくくなっていきます。

制度の側も動いています。国土交通省は、高齢者や低額所得者などの入居を拒まない賃貸住宅を登録する「セーフティネット住宅」の制度を設け、居住支援法人や居住支援協議会が入居の相談に応じる仕組みを整えてきました[5]

静岡県の場合、この仕組みが地区ごとの相談窓口という具体的な形になっているのが心強いところです。静岡県は、高齢者を含む「住宅確保要配慮者」の住まい探しを支援する居住支援法人を指定しており、静岡県居住支援協議会は令和7年度から、担当地区を決めた相談窓口を設けています[6]。県が公表している担当地区は、熱海・田方地区(熱海市、伊東市、三島市、伊豆市、伊豆の国市、函南町)/駿東地区(沼津市、御殿場市、裾野市、清水町、長泉町、小山町)/富士地区(富士市、富士宮市)/静岡葵地区/静岡駿河地区/島田・袋井地区(島田市、焼津市、藤枝市、牧之原市、吉田町、袋井市、磐田市、掛川市、菊川市、御前崎市、森町)/浜松地区(浜松市、湖西市)の7つです[6]。お住まいの、あるいはこれから住みたい市町を担当する窓口がどこかを調べておくと、相談の一歩目がぐっと軽くなります。

断られにくくするための備え

エリアを絞ったら、次は準備です。静岡でも基本は変わりません。家賃保証会社の利用、緊急連絡先の用意、そして見守りサービスの活用の3点です。オーナーが気にしているのは「家賃が滞らないか」と「万一のときにすぐ気づけるか」の2つで、前者は保証会社、後者は見守りの仕組みで、それぞれ具体的な答えを示せます。保証人を頼める人がいない場合の進め方は保証人がいない高齢者の賃貸|家賃保証会社の使い方と選び方で詳しく説明しています。オーナーから孤独死への不安を口にされたときの受け答えは「孤独死が心配」と言われたら|大家さんに安心してもらう伝え方にまとめました。

あわせて、内見のときに見ておきたい点も整理しておきましょう。玄関・浴室の段差、手すりの有無、エレベーターの有無、駅やバス停までの道の歩道と信号、最寄りのスーパーや診療所までの距離、区役所・市役所や地域包括支援センターへの行きやすさ。静岡・浜松のような広い市では、行政の窓口が支所に分かれていることもあるので、どこへ行けばよいかを先に確かめておくと安心です。賃貸ではなくサービス付き高齢者向け住宅なども視野に入れたい方はシニア向け賃貸とサ高住・有料老人ホームの違い|住まいの選び方を、離れて暮らすご家族が動く場合は高齢の親の住み替え|家族が知っておく賃貸の進め方を参考にしてください。準備の全体像は高齢者が賃貸を断られる理由と対策|シニアが部屋を借りるための5つの準備にまとめています。

まとめ:静岡は「地区を決めて、沿線で絞り、備えて相談する」

静岡県の空き家率16.7%は全国の13.8%を上回りますが、その差はまるごと賃貸用・売却用・別荘の分でした。使われないまま残っている住宅の割合は全国と同じ5.9%です。一方で共同住宅は32.3%と全国より12ポイント以上低く、賃貸の選択肢は市街地と鉄道沿線に偏ります。75歳以上の独居率は16.9%と全国より低いものの、2050年にかけて単独世帯は76.1%増と全国を上回るペースで増えていきます。この4つを重ねると、静岡での進め方は自然に決まります。東部・伊豆/中部/西部のどこで暮らすかを先に決め、静鉄・遠鉄・東海道線という沿線で候補を絞り、保証会社・緊急連絡先・見守りという備えを整えたうえで、地区の相談窓口や高齢者の入居に慣れた事業者に相談することです。ひとりで抱え込まずに、まずは話を聞いてもらうところから始めてみてください。

出典
  1. 静岡県の総住宅数177万4千戸・2018年171万5千戸から3.5%増、空き家数29万6千戸・空き家率16.7%、賃貸用・売却用及び二次的住宅を除く空き家10万5千戸・5.9%、居住世帯のある住宅146万8千戸・一戸建96万4千戸(65.7%)・共同住宅47万4千戸(32.3%)・持ち家99万戸・持ち家住宅率67.4%、全国の総住宅数6504万7千戸・2018年比4.2%増・空き家率13.8%・除く空き家率5.9%・一戸建52.7%・共同住宅44.9%・持ち家住宅率60.9%、民営借家1568万4千戸(住宅全体の28.2%)、借家(専用住宅)の1か月当たり家賃59,656円、高齢単身世帯761万7千世帯(高齢者のいる世帯の32.1%)・高齢単身世帯の借家割合32.2%(高齢者のいる世帯全体18.2%)(いずれも2023年10月1日現在):総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要』(付表 都道府県別の主な指標ほか)。stat.go.jp(PDF)
  2. 静岡県の2018年の空き家率16.4%・同「賃貸用、売却用及び二次的住宅以外の空き家」の割合5.1%、全国の2018年の同割合5.6%、全国の賃貸用の空き家443万3千戸(2023年10月1日現在):総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果』(2024年4月公表)。なお静岡県の空き家率は確報集計で16.7%に改定されている(速報16.6%)。stat.go.jp(PDF)
  3. 65歳以上人口3,624万人・高齢化率29.3%(2024年10月1日現在):内閣府『令和7年版高齢社会白書』第1章第1節「高齢化の現状と将来像」。cao.go.jp
  4. 静岡県の75歳以上人口における独居率 2020年16.9%→2050年23.6%(全国22.4%→28.9%)、一般世帯総数 2020年148万1千世帯→2050年135万世帯(8.8%減/全国5.6%減)、世帯主65歳以上の単独世帯 2020年17万6千世帯→2050年25万9千世帯(47.2%増/全国46.9%増)、世帯主75歳以上の単独世帯 2020年9万6千世帯→2050年16万9千世帯(76.1%増/全国68.7%増):国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』(2024年推計・2024年11月公表)概要。ipss.go.jp(PDF)
  5. セーフティネット住宅・居住支援法人・居住支援協議会の仕組み:国土交通省『住宅セーフティネット制度』。mlit.go.jp
  6. 住宅確保要配慮者に高齢者が含まれること、静岡県が居住支援法人を指定していること、静岡県居住支援協議会が令和7年度から居住支援法人による相談窓口を設置し、担当地区が熱海・田方地区/駿東地区/富士地区/静岡葵地区/静岡駿河地区/島田・袋井地区/浜松地区の7地区であること(2026年8月時点の掲載内容):静岡県『静岡県の住宅セーフティネット』。pref.shizuoka.jp

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