「雪かきがきつくなってきた」「子どもが仙台に出たので、近くに移りたい」——宮城県にお住まいの方から、こうしたご相談をいただきます。年齢を理由にオーナーが慎重になる場面があるのは事実ですし、断られた経験があると次の一歩が重くなります。ただ、宮城県の数字を並べてみると、この県には東北のほかの県とはっきり違う事情があることがわかります。それを知らずに探すのと、知って探すのとでは、進み方がずいぶん変わります。
宮城の共同住宅42.9%は、東北のなかで別格
まず、探せる部屋がどれだけあるかを見ます。総務省『令和5年住宅・土地統計調査』の基本集計によると、宮城県の総住宅数は2023年10月1日現在で112万9千戸でした[1]。2018年の108万9千戸から3.7%の増加です[1]。
大事なのはその中身です。人が住んでいる住宅98万4千戸を建て方で分けると、一戸建が54万3千戸で55.2%、共同住宅(アパート・マンション)が42万2千戸で42.9%を占めます[1]。全国の一戸建52.7%・共同住宅44.9%と比べれば、やや一戸建寄りという程度の差です。
ところが東北の隣県と並べると、景色が一変します。同じ調査の共同住宅の割合は、福島県27.0%、岩手県24.9%、山形県22.4%、青森県21.0%、秋田県18.6%[1]。宮城県の42.9%は、東北6県のなかで2位の福島県に16ポイント近い差をつけた1位です。政令指定都市の仙台市があり、その周辺に賃貸集合住宅が集中して建ってきた結果が、この数字に表れています。
持ち家住宅率は60.0%で、全国の60.9%をわずかに下回ります[1]。つまり県内のおよそ4割の世帯が借家暮らしです。東北で賃貸を探すなら、選択肢がいちばん厚いのが宮城県——ここが出発点になります。同じように政令指定都市を抱える北の県の事情は北海道(札幌)でシニアが賃貸を探すには|雪国の住まい探しのコツにも整理しましたので、比べてみると宮城の位置づけがつかみやすいはずです。
空き家率12.4%——東北でいちばん「余っていない」県
次が、この記事でいちばんお伝えしたい数字です。宮城県の空き家数は14万戸、空き家率は12.4%で、全国の13.8%を1.4ポイント下回ります[1]。
東北のほかの県はこうです。岩手県17.3%、青森県16.7%、秋田県15.8%、福島県15.2%、山形県13.5%[1]。宮城県の12.4%は東北6県で最も低く、しかも全国平均より低い数少ない県のひとつです。
さらに踏み込みます。空き家のうち、賃貸用でも売却用でも別荘でもない、いわゆる使われないまま残されている住宅は宮城県に5万2千戸あり、その割合は4.6%です[1]。全国の5.9%より低く、東北のほかの県(秋田10.0%、青森・岩手9.3%、山形7.9%、福島7.3%)とは比べものになりません[1]。2018年の宮城県の値も4.6%で、5年間まったく動いていません[2]。県全体の空き家率も2018年の12.0%から12.4%へ0.4ポイント上がっただけです[2]。
これが意味することは、はっきりしています。宮城県、とくに仙台圏は「空き家が余っているから選び放題」という県ではありません。 全国では「空き家が増えているのだから高齢者にも回ってくるはず」という説明をよく見かけますが、宮城県ではその前提が成り立ちません。オーナー側にも「待っていれば次の入居者が来る」という感覚が残りやすい環境です。
悲観する必要はありませんが、進め方は変わります。気に入った部屋が出てきたら判断を先延ばしにしない、条件を全部満たす1件を待つのではなく優先順位を決めておく、そして高齢の入居に慣れた窓口から入る。この3つが、宮城で探すときの現実的な構えです。空室が多い県での探し方とは違うということは、京都府でシニアが賃貸を探す|盆地と沿線で選ぶのように事情の違う地域と読み比べると実感しやすいと思います。
高齢のひとり暮らしは、宮城が東北でいちばん速く増える
借りる側の変化も見ておきます。内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、宮城県の高齢化率は29.6%(2024年)で、65歳以上人口は66万5千人、75歳以上人口は35万7千人(総人口の15.9%)です[3]。全国の高齢化率29.3%・75歳以上16.8%と比べると、ほぼ全国並みか、75歳以上はやや少なめという水準です[4]。
ところが将来の伸びが違います。同じ白書では、宮城県の高齢化率は2050年に39.4%まで上がり、その伸びは9.8ポイントと推計されています[3]。全国的にも大きいほうの伸び幅です。
ひとり暮らしの推計になると、差はもっと開きます。国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』(2024年推計)によると、宮城県で世帯主が75歳以上の単独世帯は、2020年の5万6千世帯から2050年に11万2千世帯へ98.9%増える見通しです[5]。ほぼ倍増で、全国の68.7%増を大きく上回り、東北6県では突出した伸びです(福島66.4%、山形47.0%、青森45.2%、岩手44.2%、秋田30.9%)[5]。世帯主65歳以上の単独世帯も10万7千世帯から18万2千世帯へ69.9%増で、全国の46.9%増を上回ります[5]。
いまの独居率のほうは、まだ低い水準です。宮城県の75歳以上人口における独居率は2020年で17.4%、全国の22.4%を下回っています[5]。それが2050年には25.4%まで上がる見通しです[5]。65歳以上の独居率も16.6%から25.3%へ上がります[5]。
この2つを重ねると、宮城県の姿が見えてきます。「高齢のひとり暮らしがまだ少ないけれど、これから東北でいちばん速く増える県」です。裏を返せば、いまはまだオーナーや管理会社にとって高齢単身の入居が「よくある話」になりきっていない可能性がある、ということでもあります。だからこそ、後述する備えを整えてから相談に行くことが、宮城では効いてきます。
なお県全体の世帯数は、2020年の98万1千世帯から2030年に103万5千世帯まで増えたあと、2050年には92万世帯へ減る見通しです[5]。2020年比では6.1%減で、青森27.1%減・秋田29.1%減・岩手22.3%減といった隣県に比べれば、はるかに緩やかです[5]。当面は仙台圏に人が集まり続ける前提で考えておくのが現実的でしょう。
エリアで選ぶ宮城——仙台市中心部/地下鉄沿線/仙台圏の周辺市町/県北・沿岸・仙南
宮城県は、仙台という一極に人と住宅が集まっている県です。同じ県内でも交通も気候も違うので、まずどのまとまりで探すかを決めると整理が早く進みます。
仙台市中心部(青葉区の一番町・国分町周辺、宮城野区の榴岡)は、通院と買い物を歩いて済ませたい方には第一候補になります。仙台駅を中心に病院・商店街・行政の窓口が集まっており、広瀬川沿いの平地なので坂もほとんどありません。ただし家賃相場は県内でいちばん高い地域です。
仙台市地下鉄の沿線は、シニアの足という点でとても心強い選択肢です。南北線は泉中央から富沢までを南北に貫き、東西線は八木山動物公園から荒井までを東西に結びます。いずれもエレベーターの整備された駅が多く、雪の日でも地下の移動は天候に左右されません。とくに東西線は八木山の丘の上まで通じているため、地上を歩けば急な坂になる場所へも、階段を使わずに上がれます。長町(南北線・長町一丁目・長町南)周辺は再開発が進んだ平地で、商業施設と医療機関がまとまっています。
一方で注意も必要です。泉区の丘陵地に広がる住宅団地や、太白区・青葉区の山側の造成地は、坂とバス便が前提の場所が少なくありません。家賃や広さでは魅力的に見えても、雪が降った日の上り坂を毎日歩けるかは別の話です。内見のときは部屋そのものより先に、最寄りの駅・バス停から玄関までを実際に歩いてみてください。できれば天気の悪い日に一度確かめておくと、入居後に困りにくくなります。
仙台圏の周辺市町(名取市・多賀城市・富谷市・岩沼市・利府町)は、仙台市内より家賃を抑えつつ、JR東北本線・仙石線・仙台空港アクセス線や地下鉄南北線の延長線上で仙台とつながっています。名取・岩沼は平地が多く、多賀城・塩竈は仙石線で仙台へ出やすい地域です。富谷市は仙台市北部と隣接し、泉中央からバスで結ばれています。
県北・沿岸部(石巻市・気仙沼市・大崎市・登米市・東松島市)は、家賃や自然環境の面で魅力がありますが、通院できる医療機関までの距離とその交通手段を最優先で確かめてください。大崎市の古川は東北新幹線が停まり、県北の医療・商業の中心になっています。沿岸部は東日本大震災後に高台や内陸へ移転した市街地があり、同じ市内でも生活の便が場所によって大きく違います。
仙南(白石市・大河原町・柴田町・角田市)は東北本線沿いに市街地が並び、白石蔵王駅には新幹線も停まります。ただし蔵王おろしが吹き下ろす冬の冷え込みは沿岸部より厳しく、内陸ほど積雪も増えます。暖房の効き、窓の断熱、結露のしやすさは内見時に見ておきたいところです。冬の条件を前提に住まいを選ぶ考え方は北海道(札幌)でシニアが賃貸を探すには|雪国の住まい探しのコツが詳しいので、あわせてご覧ください。
相談に行く前に整えておきたい3つの備え
エリアを決めたら、次は手元を整えます。高齢者が賃貸を断られる理由と対策|シニアが部屋を借りるための5つの準備で全体の流れを押さえたうえで、次の3つを用意しておくと話が早く進みます。空室が少ない宮城では、この準備ができているかどうかが、良い部屋に間に合うかどうかを分けます。
1つめは保証の形です。お子さんが遠方にいる、頼める親族がいないという場合も、家賃保証会社を使えば道はあります(保証人不要とうたう物件を探す場合も、実際には保証会社の審査を通す形がほとんどです)。仕組みと費用の目安は保証人がいない高齢者の賃貸|家賃保証会社の使い方と選び方で確認してください。
2つめは緊急時の連絡体制です。オーナーが高齢の入居者に対して抱く不安の中心は、家賃よりも「室内で何かあったときに気づけるか」にあります。緊急連絡先をはっきりさせ、見守りサービスを併せて用意しておくと、その不安に具体的に答えられます。伝え方そのものは「孤独死が心配」と言われたら|大家さんに安心してもらう伝え方にまとめました。
3つめは予算です。家賃は「払える額」ではなく「払い続けられる額」で決めます。年金の手取りからの逆算のしかたは年金暮らしの家賃の目安|手取りから逆算する住まいの選び方を参考にしてください。冬の暖房費が家計に効いてくる地域なので、家賃だけでなく光熱費も含めて考えておくと安心です。介護サービス付きの住まいと迷っている場合はシニア向け賃貸とサ高住・有料老人ホームの違い|住まいの選び方で選択肢を整理しておくと判断がぶれません。ご家族が主導して進める場合は高齢の親の住み替え|家族が知っておく賃貸の進め方もあわせてどうぞ。
宮城県は「居住支援法人」から相談先を選べる
不動産会社を1軒ずつ回るだけが方法ではありません。国は住宅セーフティネット制度を設けており、高齢者・低額所得者・障害者・子育て世帯などを「住宅確保要配慮者」として、入居を拒まない賃貸住宅(セーフティネット住宅)の登録、相談に乗る居住支援法人の指定、地域の関係者が集まる居住支援協議会という3つの仕組みを用意しています[6]。
宮城県では、宮城県居住支援協議会が平成26年(2014年)1月10日に設立され、令和4年(2022年)6月22日に「みやぎ住まいづくり協議会」に再編・統合されました[7]。県と仙台市をはじめとする県内の市町村に加え、宮城県宅地建物取引業協会、全日本不動産協会宮城県本部、日本賃貸住宅管理協会宮城県支部、宮城県社会福祉協議会、宮城県住宅供給公社などが参加する構成です[7]。事務局は宮城県土木部住宅課が務めています[7]。
そして、実際に相談する先として使いやすいのが居住支援法人です。宮城県が指定した居住支援法人は、県のホームページに一覧で掲載されており、2026年8月時点で19法人が並んでいます[8]。そのすべてが支援対象に高齢者を含んでおり、なかには支援対象を高齢者に絞っている法人もあります[8]。
この一覧が便利なのは、支援エリアが法人ごとに書かれていることです。宮城県全域を対象とする法人がある一方、仙台市・多賀城市・塩竈市を中心とする法人、石巻市・東松島市・女川町を対象とする法人、登米市に根ざした法人などが分かれています[8]。自分が住みたい市町村を対象にしている法人を選んで、そこから連絡するという進め方ができます。相談対応や物件紹介だけでなく、入居後の安否確認や見守りまで行う法人もあります[8]。
飛び込みで店を回って断られ続けると、気持ちが折れてしまいます。最初から高齢者の入居に理解のある窓口を選んで訪ねられる——これがこの一覧の値打ちです。
まとめ:宮城は「余っていない前提で、備えてから動く」
宮城県の共同住宅42.9%は東北で別格で、賃貸の選択肢はこの地方でいちばん厚くあります[1]。一方で空き家率12.4%は東北6県で最も低く、全国平均も下回ります(いずれも総務省『令和5年住宅・土地統計調査』2023年10月1日現在)[1]。部屋の数は多いが、余ってはいない——これが宮城の実像です。そして75歳以上のひとり暮らしは2050年までに98.9%増える見通しで、東北6県では最も速く増えていきます(国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』2024年推計)[5]。
この3つを重ねると、進め方は自然に決まります。仙台市中心部/地下鉄沿線/周辺市町/県北・沿岸・仙南のどこで暮らすかを先に決め、駅とバス停から玄関までの道のりを実際に歩いて確かめ、保証会社・緊急連絡先・見守りという備えを整えたうえで、県が指定した居住支援法人など高齢者の入居に慣れた窓口に相談することです。良い部屋が出たときにすぐ動けるよう、備えのほうを先に済ませておいてください。まずは話を聞いてもらうところから始めましょう。
- 宮城県の総住宅数112万9千戸・2018年108万9千戸から3.7%増、空き家数14万戸・空き家率12.4%、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家5万2千戸・4.6%、居住世帯のある住宅98万4千戸・一戸建54万3千戸(55.2%)・共同住宅42万2千戸(42.9%)・持ち家59万戸・持ち家住宅率60.0%、東北各県の空き家率(青森16.7%・岩手17.3%・秋田15.8%・山形13.5%・福島15.2%)および除く空き家率(青森9.3%・岩手9.3%・秋田10.0%・山形7.9%・福島7.3%)、東北各県の共同住宅の割合(青森21.0%・岩手24.9%・秋田18.6%・山形22.4%・福島27.0%)、全国の総住宅数6504万7千戸・空き家率13.8%・除く空き家率5.9%・一戸建52.7%・共同住宅44.9%・持ち家住宅率60.9%(いずれも2023年10月1日現在):総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要』(付表 都道府県別の主な指標)。stat.go.jp(PDF)
- 宮城県の2018年の空き家率12.0%・同「賃貸用、売却用及び二次的住宅を除く空き家率」4.6%(2023年も4.6%で横ばい):総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果』(2024年4月公表)。stat.go.jp(PDF)
- 宮城県の総人口224万8千人・65歳以上人口66万5千人・75歳以上人口35万7千人・高齢化率29.6%・75歳以上人口割合15.9%(令和6年=2024年)、令和32年(2050年)の高齢化率39.4%・75歳以上人口割合24.0%・高齢化率の伸び9.8ポイント:内閣府『令和7年版高齢社会白書』第1章第1節「地域別に見た高齢化」表1-1-10。cao.go.jp
- 全国の65歳以上人口3,624万人・高齢化率29.3%、75歳以上人口2,078万人・総人口に占める割合16.8%(2024年10月1日現在):内閣府『令和7年版高齢社会白書』第1章第1節「高齢化の現状と将来像」。cao.go.jp
- 宮城県の世帯主75歳以上の単独世帯 2020年5万6千世帯→2050年11万2千世帯(98.9%増/全国4,172千世帯→7,040千世帯・68.7%増、福島66.4%増・山形47.0%増・青森45.2%増・岩手44.2%増・秋田30.9%増)、世帯主65歳以上の単独世帯 2020年10万7千世帯→2050年18万2千世帯(69.9%増/全国46.9%増)、75歳以上人口における独居率 2020年17.4%→2050年25.4%(全国22.4%→28.9%)、65歳以上人口における独居率 2020年16.6%→2050年25.3%、一般世帯総数 2020年98万1千世帯→2030年103万5千世帯→2050年92万世帯(6.1%減/青森27.1%減・岩手22.3%減・秋田29.1%減):国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』(2024年推計・2024年11月公表)概要。ipss.go.jp(PDF)
- セーフティネット住宅・居住支援法人・居住支援協議会の仕組み、住宅確保要配慮者に高齢者が含まれること:国土交通省『住宅セーフティネット制度』。mlit.go.jp
- 宮城県居住支援協議会が平成26年1月10日に設立され令和4年6月22日に「みやぎ住まいづくり協議会」に再編・統合されたこと、会員に宮城県・仙台市を含む県内市町村および宮城県宅地建物取引業協会・全日本不動産協会宮城県本部・日本賃貸住宅管理協会宮城県支部・宮城県社会福祉協議会・宮城県住宅供給公社などが含まれること、事務局が宮城県土木部住宅課であること(2026年8月時点の掲載内容):宮城県『宮城県居住支援協議会について』。pref.miyagi.jp
- 宮城県が指定する居住支援法人が19法人掲載されていること、いずれも支援対象に高齢者を含み高齢者に特化した法人もあること、支援エリアが県全域・仙台市・石巻市・登米市など法人ごとに定められていること、相談対応や物件紹介に加え入居後の安否確認や見守りを行う法人があること(2026年8月時点の掲載内容):宮城県『居住支援法人のご紹介』。pref.miyagi.jp