気に入った部屋が見つかっても、申込書の次に来るのが保証会社の審査です。「収入は年金だけ。落ちるのではないか」——そう思って申し込みをためらう方は多いと思います。この記事では、法令に何が書かれていて何が書かれていないのかを起点に、実際に見られる点と、落ちたときに使える道を整理します。
年金収入だけでも審査に通ることはある
結論から言うと、年金だけの収入でも通ることはあります。理由は、「年金だけの人は不可」という決まりがどこにも無いからです。
家賃債務保証業には国土交通省の登録制度があり、その内容は「家賃債務保証業者登録規程」という告示で定められています[1]。この規程の目的は「その業務の適正な運営を確保し、家賃債務保証の健全な発達を図ることを通じて、もって賃貸住宅の賃借人その他の者の利益の保護を図ること」とされています[1]。
全11ページを確認しましたが、入居者の収入・年齢・審査基準について定めた条文はひとつもありません。 規程が扱っているのは、保証会社側の登録申請・業務・監督であって、誰を通すかではないのです。
つまり審査基準は各社が自分で決めているということ。だから会社によって結果が変わります。1社で断られても、それは「年金だけでは無理」という結論にはなりません。年金収入だけでも受け入れている物件を探すという選択肢もあわせて見ておくと、審査で止まったときの動き方が広がります。
家賃保証会社の審査で実際に見られること
法令の定めが無い以上、以下は各社が公表・説明している一般的な傾向です。断定はできませんが、準備の目安にはなります。
- 家賃と収入のバランス——月収に対して家賃が高すぎないか
- 預貯金——年金で足りない分を取り崩して払い続けられるか
- 緊急連絡先——万一のときに連絡がつく先があるか
- 過去の滞納——家賃の支払い履歴
このうち高齢の方がつまずきやすいのは、収入の額そのものより「緊急連絡先」であることが多いようです。身寄りがない場合の対応は身寄りがない高齢者の賃貸|緊急連絡先がいないときの進め方で扱っています。
家賃はいくらまでにすればよいか
家賃の目安を考えるとき、手がかりになる公的データがあります。総務省統計局の家計調査によると、65歳以上の単身無職世帯の実収入は月131,456円、可処分所得は118,465円です[2]。
同じ調査で住居費は11,416円(消費支出の7.7%)となっていますが[2]、これは持ち家の人を含んだ平均です。賃貸で暮らす人の実際の家賃はこれよりずっと高くなります。
年金額そのものも押さえておきましょう。厚生労働省の資料では、厚生年金期間が中心(20年以上)の男性で令和8年度に月176,793円とされています[3]。国民年金のみの方はこれより大きく下がり、老齢基礎年金は満額でも令和8年度で月70,608円です[3]。出典[2]の高齢単身無職世帯の実収入131,456円と比べると、ほぼ半分にあたります[2]。
ご自身の年金額から逆算する具体的な手順は年金暮らしの家賃の目安|手取りから逆算する住まいの選び方にまとめています。
預貯金は審査でどう扱われるか
年金だけでは家賃に届かない場合でも、預貯金を取り崩して払い続けられることを示せれば、判断が変わることがあります。
ここで大事なのは「いくら持っているか」ではなく「何年分あるか」という見せ方です。家賃と生活費の不足分に対して、預貯金が何年もつのかを自分で計算しておくと、説明が具体的になります。通帳の写しを求められることもあるので、申込前に用意しておくと話が早く進みます。
審査に落ちたらどうすればよいか
1社で落ちても終わりではありません。順番に試せる道があります。
まず、別の保証会社を当たる。 前述のとおり基準は各社が決めているので、結果は変わりえます。不動産会社に「他社でも審査できますか」と聞いてみてください。
次に、居住支援法人に相談する。 住宅セーフティネット法にもとづき都道府県が指定する法人で、NPO法人・一般社団法人・社会福祉法人などが指定されています[4]。業務には「登録住宅の入居者への家賃債務保証」が明記されており[4]、保証そのものを引き受ける法人があります。あわせて入居に関する情報提供・相談、見守りなどの生活支援も業務に含まれます[4]。
そして、セーフティネット住宅を探す。 高齢者を含む住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅として登録された物件で、国土交通省のシステムから地域ごとに探せます[5]。
申し込む前に用意しておくと通りやすくなるもの
審査は「足りないものを見つける手続き」ではなく、「払い続けられる根拠を確かめる手続き」です。先に示せるものを揃えておくと、判断材料が増えます。
- 年金額がわかるもの(年金振込通知書など)
- 預貯金の状況——不足分を何年まかなえるか計算しておく
- 緊急連絡先——親族が難しければ、見守りサービスや居住支援法人で代えられないか相談する
断られる理由と、その先回りの仕方は高齢者が賃貸を断られる理由と対策|シニアが部屋を借りるための5つの準備で詳しく扱っています。保証会社のしくみと費用の目安は保証人がいない高齢者の賃貸|家賃保証会社の使い方と選び方をご覧ください。
まとめ:基準は各社が決めている。1社で判断しない
押さえておきたいのは次の3点です。
- 法令に「年金だけは不可」という定めは無い——登録規程は保証会社の業務を定めるもので、入居者の収入や年齢の基準は書かれていない[1]
- 基準は各社が決めている——だから1社の結果がすべてではない
- 落ちても道はある——別の保証会社、居住支援法人による家賃債務保証[4]、セーフティネット住宅[5]
年金額が変えられない以上、動かせるのは家賃の水準と、示せる材料の数です。そこを整えてから申し込むと、結果は変わりえます。
生活保護を受けている場合は、住宅扶助の上限や代理納付という別のしくみが使えるため、生活保護で高齢者が賃貸を借りるには|住宅扶助の上限と入居審査の実際もあわせてご覧ください。
- 家賃債務保証業の登録制度の目的(業務の適正な運営の確保、賃借人その他の者の利益の保護)、および入居者の収入・年齢・審査基準に関する規定が置かれていないこと(全11ページを確認):国土交通省「家賃債務保証業者登録規程」。mlit.go.jp(告示PDF)
- 65歳以上の単身無職世帯の実収入131,456円・可処分所得118,465円・住居費11,416円(消費支出の7.7%):総務省統計局『家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要』。stat.go.jp(PDF)
- 厚生年金期間が中心(20年以上)の男性の令和8年度の年金月額176,793円、および老齢基礎年金(満額・1人分)の月額70,608円:厚生労働省『令和8年度の年金額改定についてお知らせします』(令和8年1月23日・年金局年金課)。mhlw.go.jp(PDF)
- 居住支援法人の指定主体(都道府県)、指定される法人の種類(NPO法人・一般社団法人・一般財団法人・社会福祉法人・居住支援を目的とする会社等)、業務に「登録住宅の入居者への家賃債務保証」「賃貸住宅への円滑な入居に係る情報提供・相談」「見守りなど要配慮者への生活支援」が含まれること:国土交通省「居住支援法人とは」。mlit.go.jp(PDF)
- セーフティネット住宅(登録住宅)の検索:国土交通省「セーフティネット住宅情報提供システム」。safetynet-jutaku.jp