高齢者の賃貸と見守りサービス|誰が契約し、費用は誰が払い、誰に連絡が届くのか

高齢の親の部屋探しを進めていると、申込みの前後で「見守りサービスに入っていただけますか」と言われることがあります。断りたいわけではないけれど、月額がいくらで、誰が契約者になり、実際に何が起きるのかが分からないまま話が進む——このもやもやを抱えたまま契約書に向かう方は少なくありません。

見守りは、貸主が最も求めている支援策のひとつです。国土交通省が不動産関係団体等の会員事業者に行った調査(令和元年度・回答数1,988件)では、高齢単身世帯を受け入れる際に大家等が必要と考える居住支援策として、「見守りや生活支援」が61%、「死亡時の残存家財処理」が61%、「家賃債務保証の情報提供」が49%となっています[1]

この記事では、見守りサービスを「付けるかどうか」ではなく、誰が契約し、いくら払い、誰に連絡が届くのかという実務の側から整理します。公的な制度が「安否確認」に何を求めているかを物差しとして使うと、民間サービスの見比べもしやすくなります。

賃貸で見守りサービスへの加入を求められるのはなぜか

理由は、貸主側の不安がかなり一点に集中しているためです。国土交通省の調査(令和3年度・(公財)日本賃貸住宅管理協会の会員を対象、回答者数187団体)では、高齢者に対して約7割の賃貸人が拒否感を有しているとされています[1]。さらに、そのうち入居制限を行っている団体(回答数76団体)に絞ると、高齢者の場合「最も該当する理由」は「居室内での死亡事故等に対する不安」が約9割を占めています[1]

つまり、断られる理由は年齢そのものではなく、「異変に気づく人がいない」という一点なのです。見守りサービスは、その一点を埋める道具として提案されています。

背景には世帯構造の変化があります。内閣府『令和7年版高齢社会白書』によれば、65歳以上の一人暮らしの割合は、昭和55年に男性4.3%・女性11.2%だったものが、令和2年には男性15.0%・女性22.1%となり、令和32年には男性26.1%・女性29.3%になると推計されています[2]。同白書は、世帯構造でも令和5年には単独世帯が約3割を占めるとしています[2]

断られる理由そのものと、その場でできる説明のしかたは高齢者が賃貸を断られる理由と対策|シニアが部屋を借りるための5つの準備にまとめています。

見守りサービスは誰が契約するのか

ここが最初のつまずきどころです。見守りサービスの契約者は、物件や制度によって変わります。大きくは3つの形があります。

  • 入居者本人または家族が個別に契約する——民間の見守りサービスでよくある形。入居の条件として加入を求められる場合もこれに当たります
  • 住宅の側にあらかじめ組み込まれている——居住サポート住宅やサービス付き高齢者向け住宅のように、住宅の要件として支援が付いている形
  • 自治体の事業として貸与される——自治体の緊急通報システムなど。申請と対象要件の審査があります

どの形かによって、費用の出どころも、異変が起きたときに動く人も変わります。「見守りに入ってください」と言われたら、まずこの3つのどれを指しているのかを確かめてください。

なお、2025年10月1日に施行された改正住宅セーフティネット法では、日常の安否確認、訪問等による見守り、生活・心身の状況が不安定化したときの福祉サービスへのつなぎを行う住宅として「居住サポート住宅」の認定制度が始まりました[3]。制度そのものの中身と入居する側から見た支援内容は居住サポート住宅とは?入居する側から見た支援内容とサ高住・登録住宅との違いで扱っています。

見守りの費用は誰が負担するのか

制度側の考え方ははっきりしています。国土交通省・厚生労働省が全国説明会でまとめたQ&A(令和7年9月末時点)では、居住サポート住宅における居住サポートの対価について、「基本的には、居住サポートを提供を受ける入居者が負担することを想定しているが、認定事業者が負担することやこれらの組み合わせ等も考えられる」と示されています[4]

つまり、原則は入居者負担です。大家さんが求めた条件だから大家さんが払う、とは限りません。民間サービスでも同じで、入居条件として加入を求められた場合、契約者も支払い者も入居者側になるのが通例です。

ここは交渉の余地がある部分でもあります。負担を誰がするかは決め打ちではないため、申込みの段階で「費用はどちらの負担でしょうか」と一度確認しておくと、後から揉めません。

また同Q&Aは、料金が不当である例として、認定事業者が既に同様のサービスを提供している場合に、そのサービスの料金と比べて居住サポート住宅で提供する場合の料金が高いなど、住宅確保要配慮者について異なる取扱いをしている場合を挙げています[4]同じ中身なのに高齢者にだけ高い、という値付けは想定されていないということです。

生活保護の住宅扶助で見守りの費用は出るのか

結論から書くと、居住サポートの対価は住宅扶助の代理納付の対象にはなりません。前述のQ&Aは、居住サポートの対価について「住宅を賃借して居住することに伴い通常必要とされる費用」には当たらないため、代理納付の対象にはならないと明記しています[4]

家賃と同じ扱いにはならない、という点は先に知っておくべきところです。生活保護を受けながら入居する場合、見守りの月額は別途どこから出すのかを、申込みの前に整理しておく必要があります。自治体の緊急通報システムのように、非課税世帯・生活保護世帯の自己負担を無料としている事業もあります(次の項目で触れます)。

住宅扶助の上限や入居審査の実際は生活保護で高齢者が賃貸を借りるには|住宅扶助の上限と入居審査の実際にまとめています。

自治体の緊急通報システムと民間の見守りサービスは何が違うのか

自治体が実施している緊急通報システムは、対象が絞られている代わりに、自己負担がきわめて低く設定されているのが特徴です。東京都北区の「高齢者見守り・緊急通報システム」を例に見ると、対象は次の両方に当てはまる方とされています[5]

  • 区内に住所を有する65歳以上の一人暮らし、または高齢者のみの世帯で近隣に親族が居住していない方
  • 身体上、慢性疾患があるなど「日常生活を営む上で、常時注意を要する方」

費用は月額(税別)で、課税世帯の場合、緊急通報装置が固定電話回線利用で310円・機器内蔵回線利用で410円、火災安全システム(煙感知型)が37円、安否確認センサが55円。非課税世帯・生活保護世帯はいずれも無料とされています[5]

ここで押さえたいのは、金額の安さそのものより「対象要件」のほうです。健康状態の条件が付くため、元気に暮らしている方は対象外になることがあります。入居の条件として見守りを求められている場合、自治体の事業だけでは要件を満たせず、民間サービスを併用する場面が出てきます。

お住まいの自治体で名称や金額は異なります。上の数値は北区の例であり、他の自治体にそのまま当てはまるものではありません。申請できるかどうかは、市区町村の高齢者福祉の窓口か地域包括支援センターで確認してください。

どのくらいの頻度なら「見守り」と認められるのか

民間サービスの説明には「見守ります」としか書かれていないことがあります。比べる物差しとして使えるのが、居住サポート住宅の認定基準です。

国土交通省・厚生労働省のQ&Aは、「安否確認」の基準として頻度は1日1回以上と定めたうえで、新聞配達や定期購入等をこれに充てられるかという問いに対し、「休祭日等も含めて毎日安否確認可能な方法が必要であるため、認められない」と答えています[4]。あわせて、次のことも示されています[4]

  • 1日1回以上の安否確認を行うために、複数の方法を組み合わせることは可能
  • 安否確認を委託により行う場合は委託契約を締結し、認定事業者が安否確認の実施状況を速やかに把握できる体制になっている必要がある

「毎日」「休みの日も」「実施状況を把握できる体制」——この3点が公的な最低ラインです。民間サービスを見比べるときも、週1回の電話だけで足りるのか、連休中は止まらないのか、記録が残るのかを、この物差しで確かめられます。

介護サービスの訪問があれば見守りは足りるのか

ケアマネジャーの方からよく出る問いです。すでにヘルパーが週に何度も入っているなら、それを見守りとみなせるのではないか——という考え方ですが、制度上はそう扱われていません。

Q&Aは、介護認定を受けている方について介護事業所の訪問で対応していると解釈できるか、という問いに対し、「見守りの実施者については、認定事業者を想定している。福祉サービスの一部を見守りとして実施することは各福祉サービスの法令・基準等に抵触する恐れがあるため想定していない」と答えています[4]

介護保険のサービスと、住まいに付く見守りは、別に立てるものだということです。実務では、介護の訪問予定が入らない曜日・時間帯こそ空白になりやすいので、そこを埋める設計だと考えると分かりやすくなります。

なお、居住サポート住宅で提供される「居住安定援助」には、安否確認・見守り・福祉サービスへのつなぎのほか、通院付添、買い物支援、食事の提供、健康管理、家具等のリース等も含まれうるとされ、日常生活を営むのに援助を必要とする方に対しては安否確認・見守り・福祉サービスへのつなぎを提供することが必要とされています[4]

異変があったとき、誰に連絡が届くのか

見守りサービスを比べるうえで、月額と同じくらい大事なのがここです。センサーや通報装置が反応したあと、通知はどこへ行き、誰が現地に向かうのか。この設計はサービスごとに違います。

  • 家族の携帯に通知が届く——遠方に住んでいる場合、通知を受け取っても駆けつけられません
  • 受信センターの担当者が対応する——24時間の体制があるか、夜間・休日も同じ対応かを確認します
  • 登録した緊急連絡先へ連絡が行く——連絡先が空欄だと、この経路そのものが機能しません

「通知が届く人」と「実際に部屋へ行ける人」が別だという前提で選んでください。ここを詰めておくと、大家さんに説明する材料にもなります。異変の一報が誰に届き、その次に誰が動くのかを申込書に書ける状態にしておくのが理想です。

見守りの仕組みそのものをどう組むかは、賃貸向けの見守りサービスの中身と通知の流れを見ると具体的に掴めます。緊急連絡先を立てられない場合の考え方は身寄りがない高齢者の賃貸|緊急連絡先がいないときの進め方で、役割を分解して整理しています。

見守りを付ければ入居審査に通りやすくなるのか

「見守りに入れば審査に通る」とは言えません。審査は家賃の支払い能力や保証の有無も含めて総合的に判断されるためです。

ただし、断られる理由の約9割が「居室内での死亡事故等に対する不安」であり、大家等が求める居住支援策として「見守りや生活支援」が高齢単身世帯で61%と最上位に並んでいるという国土交通省の調査結果[1]を踏まえると、相手が気にしている点に対して具体的な答えを用意できる、という意味は確かにあります。

実務的には、見守りだけでなく「死亡時の残存家財処理」(同じく61%)も同じ高さで求められている点が重要です[1]。見守りと残置物の手当てを両方そろえて出せると、話が進みやすくなります。改正住宅セーフティネット法では、残置物処理等業務を行う居住支援法人の新規指定が2025年10月1日から始まっており、居住支援法人は賃貸住宅への入居に係る情報提供・相談、見守りなどの生活支援、登録住宅の入居者への家賃債務保証等の業務を行う法人として都道府県が指定しています[3]

見守りの手当てまで含めて受け入れてくれる物件を探すなら、高齢の方の入居に前向きな物件を探すところから始めるのが近道です。大家さんへの伝え方そのものは「孤独死が心配」と言われたら|大家さんに安心してもらう伝え方にまとめました。

見守りサービスの契約前に確かめること

ここまでの内容を、そのまま質問の形にまとめます。

  1. 契約者は誰になりますか——本人か、家族か、住宅側か
  2. 月額はいくらで、誰が払いますか——原則は入居者負担とされています[4]
  3. 確認は毎日ありますか。休みの日も止まりませんか——公的な基準は1日1回以上[4]
  4. 反応がなかったとき、誰に連絡が行きますか——通知先と、その次に動く人
  5. 夜間・休日も同じ体制ですか——受信センターの稼働時間
  6. 解約はいつでもできますか——期間の縛りと違約金の有無

6つ目を入れているのには理由があります。国土交通省・厚生労働省のQ&Aは、貧困ビジネス等への注意喚起として、契約に基づかない曖昧な名目での料金の受領、強制的な契約の締結、不実の告知・不利益となる事実の不告知などによる契約の締結、入居者からの契約解除を認めない・契約解除等に際して損害賠償額をあらかじめ設けるなどの契約条項を盛り込んだ契約の締結、契約に基づかない又は強制的な金銭管理が行われないよう、認定時等に注意喚起することを挙げています[4]

これは認定事業者に向けた記述ですが、そのまま利用する側のチェックリストになります。解約できない、名目のはっきりしない料金がある、といった契約は、制度が想定していない形です。

まとめ:見守りは「付けるかどうか」ではなく「誰が何を受け取るか」で選ぶ

見守りサービスは、高齢の方の入居で最も強い障壁になっている「異変に気づく人がいない」という不安に、具体的な答えを返すための道具です。求められたときに身構える必要はありません。

確かめるべきは、契約者は誰か・費用は誰が払うか・確認は毎日あるか・通知は誰に届くかの4点です。公的な制度が定めた「1日1回以上、休祭日も含めて毎日」という基準[4]を物差しにすれば、民間サービスの説明も比べやすくなります。

そして、見守りだけで審査が決まるわけではありません。保証と緊急連絡先の手当てが揃って、はじめて話が前に進みます。足りていないのがどれなのかを切り分けるところから始めてください。

出典
  1. 住宅確保要配慮者の入居に対する賃貸人(大家等)の意識(高齢者に対して約7割が拒否感〔回答者数187団体〕)、うち入居制限を行っている団体を対象に、入居者の属性ごとに最も該当する入居制限の理由を聞いたところ高齢者の場合「居室内での死亡事故等に対する不安」が約9割であること〔回答数76団体〕〔出典:令和3年度国土交通省調査/(公財)日本賃貸住宅管理協会の賃貸住宅管理業に携わる会員を対象〕、および住宅確保要配慮者の入居に際し大家等が求める居住支援策(高齢単身世帯:見守りや生活支援61%、死亡時の残存家財処理61%、家賃債務保証の情報提供49%)〔出典:令和元年度国土交通省調査/全国の不動産関係団体等会員事業者に対するアンケート調査、回答数1,988件〕:国土交通省「住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討状況について(資料2)」。mlit.go.jp(PDF)(2026年9月3日確認)
  2. 65歳以上の一人暮らしの割合(昭和55年 男性4.3%・女性11.2%、令和2年 男性15.0%・女性22.1%、令和32年 男性26.1%・女性29.3%〈推計〉)、および令和5年に世帯構造で夫婦のみの世帯及び単独世帯がそれぞれ約3割を占めること:内閣府「令和7年版高齢社会白書(全体版)第1章第1節 3 家族と世帯」。cao.go.jp(2026年9月3日確認)
  3. 改正住宅セーフティネット法が令和7年10月1日に施行されたこと、居住サポート住宅が「日常の安否確認、訪問等による見守り、生活・心身の状況が不安定化したときの福祉サービスへのつなぎを行う住宅」とされていること、居住支援法人が「賃貸住宅への入居に係る情報提供・相談、見守りなどの生活支援、登録住宅の入居者への家賃債務保証等の業務を行う」法人として都道府県に指定されること、認定家賃債務保証業者制度:国土交通省「住宅セーフティネット制度について」。mlit.go.jp(2026年9月3日確認)
  4. 「安否確認」の基準(頻度は1日1回以上/新聞配達や定期購入等は「休祭日等も含めて毎日安否確認可能な方法が必要であるため、認められない」/複数の方法の組み合わせは可能/委託の場合は委託契約の締結と実施状況を速やかに把握できる体制)、「見守り」の実施者は認定事業者を想定し福祉サービスの一部を見守りとして実施することは想定していないこと、居住安定援助に含まれうるもの(通院付添・買い物支援・食事の提供・健康管理・家具等のリース等)と要援助者への安否確認・見守り・福祉サービスへのつなぎの必要性、居住サポートの対価は「基本的には、居住サポートを提供を受ける入居者が負担することを想定している」こと、居住サポートの対価が住宅扶助費の代理納付の対象にならないこと、料金が不当である例、残置物処理等業務を行う居住支援法人の新規指定が令和7年10月1日から開始されること、貧困ビジネス等への注意喚起の具体例:国土交通省住宅局・厚生労働省社会・援護局ほか「令和7年度 改正住宅セーフティネット法等に関する全国説明会での主なQ&A【自治体向け】」(令和7年9月末時点)。mlit.go.jp(PDF)(2026年9月3日確認)
  5. 高齢者見守り・緊急通報システムの対象要件(区内に住所を有する65歳以上の一人暮らしまたは高齢者のみの世帯で近隣に親族が居住していない方/身体上、慢性疾患があるなど「日常生活を営む上で、常時注意を要する方」)、および費用(月額・税別。課税世帯は緊急通報装置〈固定電話回線利用〉310円・〈機器内蔵回線利用〉410円、火災安全システム〈煙感知型〉37円、安否確認センサ55円。非課税世帯・生活保護世帯は無料):東京都北区「高齢者見守り・緊急通報システム」。city.kita.lg.jp(2026年9月3日確認)

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