高齢の親がペットと賃貸に住むとき|断られる理由・大家さんの承諾・入院したら残るペットをどうするか

長年一緒に暮らしてきた犬や猫がいる親の住み替えを手伝っていると、「高齢の方は…」「ペットは…」と、二つの理由で申込みが止まることがあります。ペットを手放すつもりはない、でも親の条件で借りられる部屋が見つからない——子世代が一番悩みやすい組み合わせです。

この記事は、ペットと暮らす高齢の親の部屋探しを手伝う家族に向けて、国土交通省の賃貸住宅標準契約書やモデル契約条項、動物の愛護及び管理に関する法律、環境省・県の飼い主向け資料から、確かめておくことを整理したものです。先に骨だけ書くと、断られる理由の多くは「ペットそのもの」よりも「飼い主に何かあったとき、ペットと部屋はどうなるのか」という大家さんの不安にあり、家族の側で先に答えを用意できる部分があります。

なお、「ペット可の物件なら高齢でも入れる」「大家さんは断れない」とは言えません。条件は物件ごと・大家さんごとに異なります。そのうえで、話を前に進めやすくする準備を見ていきます。

賃貸の契約書では、犬や猫の飼育はどう扱われているのか

国土交通省の賃貸住宅標準契約書は、第8条第4項で「乙は、本物件の使用に当たり、甲の書面による承諾を得ることなく、別表第2に掲げる行為を行ってはならない。」と定めています(甲=貸主、乙=借主)[1]。そして別表第2には、「観賞用の小鳥、魚等であって明らかに近隣に迷惑をかけるおそれのない動物以外の犬、猫等の動物(別表第1第五号に掲げる動物を除く。)を飼育すること。」が挙げられています[1]

つまり標準契約書のひな形では、犬や猫の飼育は「禁止」ではなく「貸主の書面による承諾が要る行為」という位置づけです。一方で、別表第1(承諾があってもしてはならない行為)には「猛獣、毒蛇等の明らかに近隣に迷惑をかける動物を飼育すること。」が入っています[1]

実際の契約書が標準契約書どおりとは限りませんが、ここから分かるのは、ペットと住めるかどうかは最後は大家さんの承諾で決まるということです。「ペット可」と書かれた物件でも、種類や頭数、大きさに条件が付いていることがあるので、申込みの前に、飼っている動物の種類・頭数・体の大きさを伝えて確認するのが近道です。標準契約書の解説も、特約の例として「居室内でのペット飼育を禁止している物件について、ペットの飼育を認める場合、その内容」を挙げています[1]。認められた条件は、口頭で終わらせず特約として書面に残してもらいましょう。

高齢でペットがいると、なぜ賃貸を断られやすいのか

高齢の方の入居について、国土交通省は「相続人の有無や所在が明らかでない単身者が死亡した際の賃貸借契約の解除や居室内に残された動産(残置物)の処理への不安感から、高齢者の入居の申込みを賃貸人が拒否することがあります。」と説明し、その不安を和らげるために残置物の処理等に関するモデル契約条項を示しています[2]

ペットがいると、この不安がもう一段重くなります。モデル契約条項のQ&Aは、「愛玩動物や遺骨等、その処理方法等が法令により定められている場合には、どのように取り扱うべきか。」という問いに、「法令に則した対応が必要であると考えられます。」と答えています[3]部屋に残るのが家具や衣類ではなく生き物だと、ほかの荷物と同じように片づけることはできない、ということです。

飼い主の側にも責任が定められています。動物の愛護及び管理に関する法律は、第7条第4項で動物の所有者に「できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めなければならない。」としています[4]。そして神奈川県は、「県動物愛護センターに飼えなくなったとペットを持ち込む方の7割が飼い主の高齢を理由としたもの」だと紹介しています(同県ページ・2026年7月27日更新)[5]

大家さんから見ると、「入居者が倒れたり亡くなったりしたとき、部屋に残された犬や猫を誰が引き取るのか」が見えないことが、断る理由になりやすいと考えられます。裏返せば、その答えを家族が先に示せれば、話が進む余地があるということです。高齢を理由に断られる場面全体の準備は高齢者が賃貸を断られる理由と対策|シニアが部屋を借りるための5つの準備にまとめています。

ペットと一緒に入れる部屋を、親の条件から探す——飼っている動物の種類・頭数と、預け先の当てを先に伝えたうえで相談できます。

ペット可の賃貸に申し込むとき、大家さんに何を伝えると話が進むのか

大家さんの不安が「飼い主に何かあったとき」なら、伝えるべきことも決まってきます。環境省のパンフレット『高齢ペットとシルバー世代』は、困った時の備えとして次のことを挙げています[6]

  • 一時的な預け先を見つけておく——「家族、友人、近所の人など、いつも会っている人ならペットも安心です。」
  • かかりつけの動物病院を作る——一時的な預かりができる場合もある
  • ペットホテルやペットシッターを調べておく——「事前に探して、試しに短期間で利用してみましょう。」
  • 基本的なしつけをしておく——トイレのしつけ、ケージの中でおとなしくできること
  • ペットの健康手帳を作る——ワクチン接種の記録などをつけておく

これらは、そのまま申込みのときに大家さん・管理会社へ伝えられる材料になります。たとえば「親が入院したときは、子の私が引き取ります」「かかりつけの動物病院で一時預かりの了承を得ています」「ワクチンの記録はこの手帳です」と具体的に言えると、「残されたペットはどうなるのか」という問いに答えた状態で話ができます。

申込書の緊急連絡先の欄に誰を書くかは、ペットの引き取り手と同じ人にしておくと説明が一本化します。欄の埋め方は高齢者の賃貸の申込書と必要書類|年金の証明・本人確認・緊急連絡先の欄をどう埋めるかを参考にしてください。

飼い主の親が入院したら、部屋に残されたペットはどうなるのか

急な入院は、ペットと暮らす一人暮らしの高齢者にとって一番の難所です。神奈川県のページも、高齢の飼い主に起こりうる困りごととして「医者に入院を勧められたが、ペットの世話を頼める人がいない」を挙げています[5]

埼玉県は、高齢の飼い主に向けて「突然の出来事に備えて、親族・ペットホテルなど一時的な預かり先を探しておきましょう」「飼い主の長期入院や施設入所を想定して、ペットの引取り先(新しい飼い主)をあらかじめ探しておきましょう」と呼びかけています[7]「一時的に預ける先」と「飼えなくなったときに引き取ってもらう先」は別に考えておく、というのがポイントです。

入院が長引くと、部屋そのものをどうするかという判断も出てきます。解約を急ぐべきか、戻る部屋を残すかは高齢の親が入院したときの賃貸の解約|いつ決めるか・家族が代われるか・荷物はどうするかで整理しています。ペットの預け先が決まっていれば、部屋の判断を落ち着いて進められます。

高齢の飼い主がペットを飼えなくなったとき、どこに相談できるのか

環境省のパンフレットは「一人で抱え込まず、周りの人に相談しましょう!!」としたうえで、将来への備えとして、ペットのための遺言・信託、老犬・老猫ホーム、ペット保険を紹介しています[6]。老犬・老猫ホームについては「ペットを預かり亡くなるまで世話をしてくれる民間業者(第一種動物取扱業)があります。よく調べて相談のうえ、利用するようにしましょう。」と書かれています[6]

埼玉県は、介護・福祉関係者から高齢の飼い主へのアドバイス例として「終活ノート等にペットのことを記しておきましょう」「ペットのための信託を調べてみましょう」を挙げています[7]。ケアマネジャーなど親を支える専門職と、ペットのことも共有しておくと安心です。

なお、動物の愛護及び管理に関する法律第35条は、都道府県等が犬や猫の所有者から引取りを求められたときの規定を置いていますが、終生飼養の趣旨に照らして引取りを求める相当の事由がないと認められる場合などには、引取りを拒否できるとも定めています[4]「いざとなれば行政が引き取ってくれる」と考えず、預け先と引き取り手を先に決めておくことが、親にとってもペットにとっても安心につながります。

退去するとき、ペットによるキズや臭いの費用は誰が負担するのか

ペットと暮らした部屋の退去では、原状回復の費用が気になります。国土交通省の標準契約書に付いている原状回復の条件の表は、借主の負担となるものの例に「飼育ペットによる柱等のキズ、臭い(ペットによる柱、クロス等にキズが付いたり、臭いが付着している場合)」を挙げています[1]

また同じ契約書の記載例は、例外としての特約の例に「居室内でのペット飼育を認める代わりに、壁クロスの張替費用全額を借主の負担とする場合」を示しています[1]ペット飼育を認める物件では、こうした特約が付くことがあるので、契約前に特約欄を読み、分からない点はその場で確認してください。敷金がどこまで返ってくるかの考え方は高齢者の賃貸の初期費用|敷金・礼金・保証委託料はいくらか、年金でどう用意するかで解説しています。

ペットと一人で暮らす親の異変に、誰が気づくのか

内閣府の『令和7年版高齢社会白書』によれば、65歳以上の人口に占める一人暮らしの人の割合は、令和2年に男性15.0%、女性22.1%です[8]。ペットと二人きりで暮らしている高齢の方も少なくありません。

一人暮らしの飼い主が倒れたとき、一番近くにいるのはペットですが、ペットは誰にも知らせることができません。発見が遅れれば、飼い主の命に関わるだけでなく、世話を受けられないペットも危険な状態になります。「親の生活が止まったことが、家族に早く届く仕組み」は、ペットの預け先と並ぶ、もう一つの備えです。大家さんが高齢の方の入居をためらう背景には、亡くなったあとの契約の解除や、部屋に残された荷物の処理への不安があります[2]。異変に早く気づける体制は、その不安を小さくする備えの一つとして、申込みのときに伝えられます。

見守りの仕組みを誰が契約し、費用を誰が払い、通知が誰に届くのかは高齢者の賃貸と見守りサービス|誰が契約し、費用は誰が払い、誰に連絡が届くのかで整理しています。

ペットと暮らす親の生活の途絶が家族に届く形にしておく——申込みのときに、大家さんへ伝えられる備えの一つにもなります。

まとめ:「残されたペットはどうなるのか」に先に答えてから申し込む

この記事で確かめたことを、短く並べます。

  • 標準契約書では、犬・猫等の飼育は貸主の書面による承諾が要る行為(第8条第4項・別表第2)。認められた条件は特約として書面に残す[1]
  • 高齢の入居を断る背景には死亡時の契約解除や残置物の処理への不安があり、ペットは法令に則した対応が要るため、その不安が重くなりやすい[2][3]
  • 動物の所有者には終生飼養の努力義務がある。行政の引取りは拒否されることもある(動物愛護管理法第7条第4項・第35条)[4]
  • 一時的な預け先・引き取り手・かかりつけ動物病院・しつけ・健康手帳を用意して、申込み時に具体的に伝える[6][7]
  • ペットによる柱・クロスのキズや臭いは借主負担の例に挙げられている。ペット可物件の特約欄は契約前に読む[1]
  • 一人暮らしの親の異変に誰が気づくかも、ペットの備えと一緒に決めておく[8]

ペットは、高齢の親にとって毎日の張り合いそのものであることが多いものです。「ペットがいるから無理」とあきらめる前に、預け先と引き取り手、見守りの形を家族で決め、それを伝えて部屋を探す。それが、親とペットが一緒に住み続けるための一番確かな順番です。住み替え全体の進め方は高齢の親の住み替え|家族が知っておく賃貸の進め方も参考にしてください。

出典
  1. 第8条第4項「乙は、本物件の使用に当たり、甲の書面による承諾を得ることなく、別表第2に掲げる行為を行ってはならない。」、別表第1第五号「猛獣、毒蛇等の明らかに近隣に迷惑をかける動物を飼育すること。」、別表第2第三号「観賞用の小鳥、魚等であって明らかに近隣に迷惑をかけるおそれのない動物以外の犬、猫等の動物(別表第1第五号に掲げる動物を除く。)を飼育すること。」、原状回復の条件の表で借主の負担となるものの例に「飼育ペットによる柱等のキズ、臭い(ペットによる柱、クロス等にキズが付いたり、臭いが付着している場合)」が挙げられていること、例外としての特約の例に「居室内でのペット飼育を認める代わりに、壁クロスの張替費用全額を借主の負担とする場合」が挙げられていること、第19条(特約条項)関係の記載例に「居室内でのペット飼育を禁止している物件について、ペットの飼育を認める場合、その内容」が挙げられていること:国土交通省『賃貸住宅標準契約書(平成30年3月版・連帯保証人型)』(2026年9月13日閲覧)。mlit.go.jp(PDF)
  2. 「近時、高齢者の単身世帯が増加している中、民間賃貸住宅等においては、相続人の有無や所在が明らかでない単身者が死亡した際の賃貸借契約の解除や居室内に残された動産(残置物)の処理への不安感から、高齢者の入居の申込みを賃貸人が拒否することがあります。」とされていること:国土交通省『残置物の処理等に関するモデル契約条項』(2026年9月13日閲覧)。mlit.go.jp
  3. Q13「愛玩動物や遺骨等、その処理方法等が法令により定められている場合には、どのように取り扱うべきか。」に対し、A13で「一定の動産に関しては、法令に基づく取扱いが必要となる場合があると考えられ、その場合には、必要に応じて専門家等に相談の上、法令に則した対応が必要であると考えられます。」とされていること:国土交通省『残置物の処理等に関するモデル契約条項に係るQ&A』(R7.10月版、2026年9月13日閲覧)。mlit.go.jp(PDF)
  4. 動物の所有者は「その所有する動物の飼養又は保管の目的等を達する上で支障を及ぼさない範囲で、できる限り、当該動物がその命を終えるまで適切に飼養すること(以下「終生飼養」という。)に努めなければならない。」こと(第7条第4項)、都道府県等は犬又は猫の引取りをその所有者から求められたときはこれを引き取らなければならないが、「犬猫等販売業者から引取りを求められた場合その他の第七条第四項の規定の趣旨に照らして引取りを求める相当の事由がないと認められる場合として環境省令で定める場合には、その引取りを拒否することができる。」こと(第35条第1項):e-Gov法令検索『動物の愛護及び管理に関する法律』(昭和四十八年法律第百五号、2026年9月13日閲覧)。laws.e-gov.go.jp
  5. 「県動物愛護センターに飼えなくなったとペットを持ち込む方の7割が飼い主の高齢を理由としたものです。」とされていること、高齢の飼い主の困りごとの例に「医者に入院を勧められたが、ペットの世話を頼める人がいない」が挙げられていること:神奈川県『高齢の飼い主の方へ』(更新日:2026年7月27日、2026年9月13日閲覧)。pref.kanagawa.jp
  6. 困った時に備えて、一時的な預け先(「家族、友人、近所の人など、いつも会っている人ならペットも安心です。」)、かかりつけの動物病院、ペットホテルやペットシッター(「事前に探して、試しに短期間で利用してみましょう。」)、基本的なしつけ、ペットの健康手帳を用意すること、「一人で抱え込まず、周りの人に相談しましょう!!」とされていること、将来への備えとしてペットのための遺言・信託、老犬・老猫ホーム(「ペットを預かり亡くなるまで世話をしてくれる民間業者(第一種動物取扱業)があります。よく調べて相談のうえ、利用するようにしましょう。」)、ペット保険が紹介されていること:環境省パンフレット『高齢ペットとシルバー世代』(2026年9月13日閲覧)。env.go.jp(PDF)
  7. 飼い主に「突然の出来事に備えて、親族・ペットホテルなど一時的な預かり先を探しておきましょう」「飼い主の長期入院や施設入所を想定して、ペットの引取り先(新しい飼い主)をあらかじめ探しておきましょう」と呼びかけていること、介護・福祉関係者向けのアドバイス例に「終活ノート等にペットのことを記しておきましょう」「ペットのための信託を調べてみましょう」が挙げられていること:埼玉県『ペットと飼い主のもしもの備え~高齢者・障がい者編~』(掲載日:2025年12月18日、2026年9月13日閲覧)。pref.saitama.lg.jp
  8. 65歳以上の男女それぞれの人口に占める一人暮らしの者の割合が「令和2年には男性15.0%、女性22.1%」であること:内閣府『令和7年版高齢社会白書(全体版)』第1章第1節3「家族と世帯」(2026年9月13日閲覧)。cao.go.jp

出典URLはいずれも2026年9月13日に閲覧し、掲載内容を確認しています。条文は同日時点のe-Gov法令検索の掲載によります。ペットの飼育の可否・種類・頭数・特約の内容は、物件ごとの契約書と大家さん・管理会社の判断によって決まります。特定のペット預かり業者・保険商品をおすすめするものではありません。

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