茨城県でシニアが賃貸を探すコツ|TX沿線と常磐線で選ぶ、単独世帯が急増する県

「一戸建ての庭と階段がつらくなってきた」「子どもがつくばや都内に出たので、少し近くへ移りたい」——茨城県にお住まいの方から、こうしたご相談をいただきます。年齢を理由にオーナーが慎重になる場面があるのは事実ですが、茨城県の数字を見ていくと、この県には他県とは違う、やや意外な特徴があることがわかります。それを知って探すのと知らずに探すのとでは、部屋探しの進め方がずいぶん変わります。

空き家率14.1%——全国が上がるなか、茨城は下がった

まず「量」を確認します。総務省『令和5年住宅・土地統計調査』の基本集計によると、茨城県の総住宅数は2023年10月1日現在で139万1千戸で、2018年の132万9千戸から4.7%増えました[1]。全国の増加率4.2%をやや上回るペースです。

ここで、茨城県ならではの注目点があります。全国の空き家率は2018年の13.6%から2023年の13.8%へ上昇し過去最高を更新しましたが、茨城県の空き家率は2018年の14.8%から2023年の14.1%へ0.7ポイント低下しています[1][2]。全国が上がっているときに下がっている県は多くありません。「空き家が全国的に増えているから、シニアでも部屋を借りやすくなっている」という説明を見かけますが、茨城県ではこの説明の前提そのものが崩れています——空き家率が下がっているのは、むしろ住宅が着実に埋まっている証拠だからです。

ただし、手放しでは喜べません。賃貸用でも売却用でも別荘でもない、いわゆる使われないまま残されている空き家は9万3千戸あり、その割合は2018年の5.9%から2023年の6.7%へ0.8ポイント上昇しています[1][2]。全国のこの割合も5.6%から5.9%へ上がっていますが、茨城県の上昇幅はそれより大きいのです。つまり「貸し出されている部屋はよく埋まる一方、持ち主が貸すか売るか決めかねている空き家が積み上がっている」という構図で、これは千葉県で高齢者が賃貸を借りるには|沿線と地形で選ぶで紹介した状況とよく似ています。市場に出ている部屋は動きが速いので、条件のよい物件は早めに動くのが安心です。

住宅の中身も見ておきます。人が住んでいる住宅118万7千戸のうち、一戸建が83万2千戸で70.1%、共同住宅(アパート・マンション)は32万8千戸で27.6%です[1]。全国の一戸建52.7%・共同住宅44.9%と比べると、茨城県は一戸建中心の住宅事情で、共同住宅の割合は全国よりかなり低いことがわかります[1]。持ち家住宅率は69.4%で全国の60.9%を上回ります[1]。集合住宅の絶対数自体は32万戸以上あるものの、都市部に比べると賃貸の選択肢はまとまったエリアに集中しやすい、という前提で探すのが現実的です。

75歳以上のひとり暮らしは2050年までに102.8%増——全国でも数少ない「倍増県」

次に借りる側の変化です。内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、茨城県の高齢化率は30.9%(2024年)で、65歳以上人口は86万6千人、75歳以上人口は47万7千人(総人口の17.0%)です[3]。全国の高齢化率29.3%・75歳以上16.8%をいずれも上回ります[4]。2050年には65歳以上人口割合が40.0%、75歳以上が25.2%まで上がる見通しで、その伸びは9.1ポイントです[3]

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい数字です。国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』(2024年推計)によると、茨城県で世帯主が75歳以上の単独世帯は、2020年の7万6千世帯から2050年に15万4千世帯へ102.8%増える見通しです[5]。全国の68.7%増を大きく上回り、2050年までに2倍以上になる県は、沖縄県(134.6%増)・滋賀県(115.6%増)・埼玉県(103.9%増)・茨城県(102.8%増)の全国4県だけです[5]。首都圏で見ても、茨城県は埼玉県と並ぶ数少ない「倍増県」で、隣接する埼玉県でシニアが賃貸を探すコツと同じ急増のカーブをたどります。

いまの独居率はまだ低めです。65歳以上人口における独居率は2020年で16.5%、2050年には25.7%まで上がる見通しで、全国の20.5%→27.9%を下回る水準が続きます[5]「高齢のひとり暮らしはまだ少ないが、これから全国でも指折りの速さで増えていく」——これが茨城県の姿です。裏を返せば、オーナーや管理会社にとって高齢単身の入居が「よくある話」になりきっていない可能性がある地域とも言えます。だからこそ、後述する備えを整えてから相談に行くことが効いてきます。

なお県全体の一般世帯総数は、2020年の118万2千世帯から2030年の125万1千世帯まで増えたあと、2050年には111万世帯へ減る見通しです[5]。2020年比では6.1%減で、全国の5.6%減とほぼ同水準です[5]。当面はTX沿線を中心に世帯が増え続ける前提で考えておくのが現実的でしょう。

エリアで選ぶ茨城——TX沿線/常磐線沿線/県北・鹿行/県西

茨城県は、東京から放射状に伸びる鉄道と、県北の山、鹿行の工業地帯、県西の内陸という性格の違うエリアが並ぶ県です。まずどのまとまりで探すかを決めると整理が早く進みます。

つくばエクスプレス(TX)沿線(守谷市・つくばみらい市・つくば市)は、県内でもっとも新しい住宅地が広がるエリアです。TXは秋葉原まで最速45分前後で結び、駅周辺は近年の再開発でバリアフリー化が進んでいます。つくば市は筑波研究学園都市として計画的に整備された街で、研究機関や大学病院が集まり、道路も広く平坦です。守谷市・つくばみらい市は東京への通勤圏でありながら、都心に比べて家賃を抑えやすい立地として人気が高まっています。

常磐線沿線(取手市・土浦市・水戸市)は、上野東京ラインの直通で都心へ乗り換えなしで出られる沿線です。取手市は県内でもっとも東京寄りで、通院で都内の病院に通い続けたい方に向いています。土浦市は霞ヶ浦に面した商業の中心地、水戸市は県庁所在地で、病院・行政窓口・商店街が駅周辺にまとまっています。常磐線とTXはさらに南で千葉県の松戸・柏方面ともつながっており、県境をまたいだ沿線選びの考え方は千葉県で高齢者が賃貸を借りるには|沿線と地形で選ぶでも触れています。

県北(日立市・高萩市・北茨城市)は太平洋沿岸に細長く広がる地域で、常磐線が海沿いを走ります。日立市は日立製作所発祥の企業城下町で、市街地は海と山に挟まれた土地に位置し、平地が限られるため坂のある区画が少なくありません。内見の際は駅から現地までの高低差を実際に歩いて確認することをおすすめします。

鹿行地域(鹿嶋市・神栖市・潮来市)は鹿島臨海工業地帯を抱える太平洋側のエリアで、鉄道の便が限られ、車での移動が前提になりやすい地域です。買い物や通院の足をどう確保するかを、部屋を決める前に具体的に考えておく必要があります。

県西(古河市・筑西市・下妻市)は栃木県・埼玉県と接する内陸部で、JR宇都宮線や東北本線に近いエリアもあれば、鉄道駅から離れたエリアもあります。TX沿線や常磐線沿線に比べると家賃相場は抑えめですが、通院先までの交通手段は事前に確認しておきたいところです。

相談に行く前に整えておきたい3つの備え

エリアを決めたら、次は手元を整えます。高齢者が賃貸を断られる理由と対策|シニアが部屋を借りるための5つの準備で全体の流れを押さえたうえで、次の3つを用意しておくと話が早く進みます。

1つめは保証の形です。お子さんが遠方にいる、頼める親族がいないという場合も、家賃保証会社を使えば道はあります(保証人不要とうたう物件を探す場合も、実際には保証会社の審査を通す形がほとんどです)。仕組みと費用の目安は保証人がいない高齢者の賃貸|家賃保証会社の使い方と選び方で確認してください。

2つめは緊急時の連絡体制です。オーナーが高齢の入居者に対して抱く不安の中心は、家賃よりも「室内で何かあったときに気づけるか」にあります。緊急連絡先をはっきりさせ、見守りサービスを併せて用意しておくと、その不安に具体的に答えられます。伝え方そのものは「孤独死が心配」と言われたら|大家さんに安心してもらう伝え方にまとめました。その緊急連絡先を書ける相手がいないときの手当てのしかたは、身寄りがない高齢者の賃貸|緊急連絡先がいないときの進め方で整理しています。

3つめは予算です。家賃は「払える額」ではなく「払い続けられる額」で決めます。年金の手取りからの逆算のしかたは年金暮らしの家賃の目安|手取りから逆算する住まいの選び方を参考にしてください。介護サービス付きの住まいと迷っている場合はシニア向け賃貸とサ高住・有料老人ホームの違い|住まいの選び方で選択肢を整理しておくと判断がぶれません。ご家族が主導して進める場合は高齢の親の住み替え|家族が知っておく賃貸の進め方もあわせてどうぞ。

茨城県居住支援協議会と12の居住支援法人

不動産会社を1軒ずつ回るだけが方法ではありません。国は住宅セーフティネット制度を設けており、高齢者・低額所得者・障害者・子育て世帯などを「住宅確保要配慮者」として、入居を拒まない賃貸住宅(セーフティネット住宅)の登録、相談に乗る居住支援法人の指定、地域の関係者が集まる居住支援協議会という3つの仕組みを用意しています[6]

茨城県居住支援協議会は、不動産関係団体(茨城県宅地建物取引業協会)、居住支援団体(茨城県社会福祉協議会、茨城県国際交流協会、茨城県居住支援法人協議会)、県内全44市町村、法務省関係機関(水戸保護観察所など)、そして茨城県の福祉・住宅関連部局が参加する構成です[7]。県内すべての市町村が名を連ねている点は、相談先が身近な自治体単位でも見つけやすいことを意味します。

実際に相談する先として使いやすいのが居住支援法人です。茨城県が指定する居住支援法人は、2026年2月時点で12法人あります[8]。居住支援法人は、家賃債務保証、賃貸住宅への入居に関する情報提供・相談、見守りなどの生活支援、賃貸人への情報提供、退去後の残置物処理といった業務のうち、いずれかを行う法人として県の指定を受けています[8]。指定にあたっては県が実施計画や財産的基礎などの審査基準を定めて審査しており、名簿に載っている法人は一定の基準を満たした窓口だといえます[8]

飛び込みで不動産会社を回って断られ続けると、気持ちが折れてしまいます。最初から高齢者の入居に理解のある窓口を選んで訪ねられる——これがこの制度の値打ちです。

まとめ:茨城は「沿線で選び、備えてから、増える前に動く」

茨城県の空き家率14.1%は、全国が上昇するなかで2018年から0.7ポイント下がった数少ない県です。一方で、貸すか売るか決めかねている空き家の割合は上昇しており、市場に出ている部屋は動きが速いという現実があります。そして75歳以上のひとり暮らしは2050年までに102.8%増と、全国でも4県しかない「倍増県」の一角です。いまはまだ高齢単身の入居例が少ない地域だからこそ、備えを整えて動くことが実を結びます。

この3つを重ねると、進め方は自然に決まります。TX沿線/常磐線沿線/県北・鹿行/県西のどこで暮らすかを先に決め、保証会社・緊急連絡先・見守りという備えを整えたうえで、県が指定した居住支援法人など高齢者の入居に慣れた窓口に相談することです。良い部屋が出たときにすぐ動けるよう、備えのほうを先に済ませておいてください。まずは話を聞いてもらうところから始めましょう。

出典
  1. 茨城県の総住宅数139万1千戸・2018年132万9千戸から4.7%増、空き家数19万6千戸・空き家率14.1%、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家9万3千戸・6.7%、居住世帯のある住宅118万7千戸・一戸建83万2千戸(70.1%)・共同住宅32万8千戸(27.6%)・持ち家82万4千戸・持ち家住宅率69.4%、全国の総住宅数6504万7千戸・空き家率13.8%・除く空き家率5.9%・一戸建52.7%・共同住宅44.9%・持ち家住宅率60.9%(いずれも2023年10月1日現在):総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要』(付表 都道府県別の主な指標)。stat.go.jp(PDF)
  2. 茨城県の空き家率 2023年14.1%・2018年14.8%、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家率 2023年6.7%・2018年5.9%、全国の空き家率 2023年13.8%・2018年13.6%、同除く空き家率 2023年5.9%・2018年5.6%:総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果』(2024年4月公表)。stat.go.jp(PDF)
  3. 茨城県の総人口280万6千人・65歳以上人口86万6千人・75歳以上人口47万7千人・65歳以上人口割合30.9%・75歳以上人口割合17.0%(令和6年=2024年)、令和32年(2050年)の65歳以上人口割合40.0%・75歳以上人口割合25.2%・高齢化率の伸び9.1ポイント:内閣府『令和7年版高齢社会白書』第1章第1節「地域別に見た高齢化」表1-1-10。cao.go.jp
  4. 全国の65歳以上人口3,624万人・高齢化率29.3%、75歳以上人口2,078万人・総人口に占める割合16.8%(2024年10月1日現在):内閣府『令和7年版高齢社会白書』第1章第1節「高齢化の現状と将来像」。cao.go.jp
  5. 茨城県の世帯主75歳以上の単独世帯 2020年7万6千世帯→2050年15万4千世帯(102.8%増/全国4,172千世帯→7,040千世帯・68.7%増、沖縄県134.6%増・滋賀県115.6%増・埼玉県103.9%増)、65歳以上人口における独居率 2020年16.5%→2050年25.7%(全国20.5%→27.9%)、一般世帯総数 2020年118万2千世帯→2030年125万1千世帯→2050年111万世帯(6.1%減/全国5.6%減):国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』(2024年推計・2024年11月公表)概要。ipss.go.jp(PDF)
  6. セーフティネット住宅・居住支援法人・居住支援協議会の仕組み、住宅確保要配慮者に高齢者が含まれること:国土交通省『住宅セーフティネット制度』。mlit.go.jp
  7. 茨城県居住支援協議会の構成員に不動産関係団体(茨城県宅地建物取引業協会)、居住支援団体(茨城県社会福祉協議会・茨城県国際交流協会・茨城県居住支援法人協議会)、県内全44市町村、法務省関係機関(水戸保護観察所・水戸刑務所等)、茨城県の関連部局が含まれること(2026年8月時点の掲載内容・更新日2025年3月7日):茨城県『茨城県居住支援協議会』。pref.ibaraki.jp
  8. 茨城県が指定する住宅確保要配慮者居住支援法人が令和8年(2026年)2月24日時点で12法人であること、居住支援法人が家賃債務保証・入居に係る情報提供や相談・見守り等の生活支援・賃貸人への情報提供・残置物処理等の業務のいずれかを行うこと、指定にあたり県が実施計画や財産的基礎等の審査基準を定めていること:茨城県『住宅確保要配慮者居住支援法人の指定』。pref.ibaraki.jp

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