「庭と階段のある実家を手放して、岡山駅の近くで暮らしたい」「津山から、子どもがいる倉敷に移りたい」——岡山県にお住まいの方からのご相談は、こうした県内での住み替えが目立ちます。年齢を理由にオーナーが慎重になる場面があるのは事実です。ただ岡山県では、それと同じくらい「募集に出ている部屋そのものが多くない」という前提が効いてきます。この記事では、公的統計と県が公表している窓口の情報をもとに、岡山県での探し方を順番に整理します。
岡山の住宅は一戸建65.9%・共同住宅31.7%——まず賃貸の母数を知る
総務省『令和5年住宅・土地統計調査』の基本集計(確報)によると、岡山県の総住宅数は2023年10月1日現在で95万5千戸、2018年の91万6千戸から4.3%増えました[1]。全国の増加率4.2%とほぼ同じで、住宅が増えるペース自体は平均的です[1]。
大切なのは中身です。人が住んでいる住宅79万4千戸のうち、一戸建は52万3千戸で65.9%、共同住宅(アパート・マンション)は25万2千戸で31.7%です[1]。全国は一戸建52.7%・共同住宅44.9%ですから、岡山県は共同住宅の割合が全国より13ポイントほど低いことになります[1]。持ち家住宅率も65.6%と、全国の60.9%を上回ります[1]。
言い換えると、岡山県は「持ち家の一戸建てに住む」ことが標準の県です。賃貸として市場に出ている部屋の絶対数がもともと厚くないので、都市部の感覚で「条件を出せば候補が何十件も並ぶ」と思っていると、選択肢の少なさに戸惑いやすくなります。共同住宅が57.4%を占める大阪市で高齢者が賃貸を借りるには|窓口のある市から探す進め方や、持ち家住宅率52.7%で借家が選ばれやすい福岡県で高齢者・シニアが賃貸を探すには?探し方と備えとは、探し始めの前提がかなり違います。
空き家率16.5%——「空き家が多い=借りられる部屋が多い」ではない
岡山県の空き家率は2023年で16.5%、全国の13.8%を上回ります[1]。空き家数は15万7千戸です[1]。この数字だけを見ると「余っているなら借りやすいのでは」と思えますが、内訳を見ると印象が変わります。
同じ調査で、賃貸・売却用および二次的住宅(別荘など)を除いた空き家率は8.6%です[1]。つまり16.5%のうち半分程度は、すでに募集や売却が出ている住宅と別荘等で、残りが「使われないまま置かれている家」ということになります。使われないまま置かれている家は、そのままでは借り手に回ってきません。空き家率の高さは、ただちに部屋の選びやすさにはつながらないのです。
なお、同じ調査でも公表の段階によって数値がわずかに動きます。岡山県の空き家率は速報集計では16.4%、確報集計では16.5%と0.1ポイント違い、この記事では確報集計の値を使っています[1][2]。5年前との比較は速報集計で見ると2018年15.6%→2023年16.4%で、岡山県の空き家率は上昇の方向です[2]。全国も13.6%→13.8%と上昇しており[2]、この点では全国と同じ向きに動いています。
高齢化率31.2%——ただし「これから急に上がる県」ではない
内閣府『令和7年版高齢社会白書』によると、岡山県の総人口は183万1千人、うち65歳以上は57万1千人で、高齢化率は31.2%(令和6年=2024年)です[3]。75歳以上は33万7千人、割合は18.4%です[3]。全国の高齢化率29.3%を少し上回る水準です[4]。
特徴的なのはこの先です。令和32年(2050年)の岡山県の高齢化率は37.8%と見込まれ、2024年からの伸びは6.6ポイント。これは47都道府県を伸びの小さい順に並べたとき5番目にあたります[3]。伸びが最も小さいのは島根県の4.5ポイントで、大分県6.1、熊本県6.2、福岡県6.5と続きます[3]。
つまり岡山県は、「これから高齢化が急に進む県」ではなく、すでに進んだ状態が長く続く県だと読めます。高齢の入居希望者が珍しい存在ではなく、地域の不動産会社にとってもオーナーにとっても、以前から向き合ってきたテーマだということです。これは探す側にとって悪い話ではありません。前例がある地域では、話の通り方が早いことがあります。
世帯数は2030年まで増える。増え続けるのは75歳以上のひとり暮らし
国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』(2024年推計)では、岡山県の一般世帯総数は2020年の80万世帯から2030年に82万3千世帯まで増え、そこから減少に転じて2050年に73万2千世帯になると見込まれています[5]。全国が2020年から2050年にかけて5.6%減る中で、岡山県は当面の10年ほど世帯数が増える側にいます[5]。人口が減っても、世帯が分かれれば住まいは必要になるためです。
増える中身が住まい探しに直結します。世帯主が75歳以上の単独世帯は、2020年の6万4千世帯から2050年には9万7千世帯へ増える見通しです[5]。65歳以上人口に占める単独世帯主の割合(独居率)も18.9%から25.8%へ上がります[5]。一般世帯のうち世帯主が65歳以上の世帯の割合は、2020年の40.5%から2050年には46.8%になります[5]。
ひとり暮らしの高齢世帯が増えるということは、オーナー側が気にする「もしものときにどうなるか」という論点が、これからも続くということでもあります。家賃の支払いに不安がないことに加えて、日々の様子が誰かに伝わる形をつくっておくと、話が前に進みやすくなります。見守りサービスを使う方法はR65見守りで確認できます。後期高齢者の独居がすでに全国より進んでいる府県での探し方は、京都府でシニアが賃貸を探す|盆地と沿線で選ぶでも扱っています。年金収入から無理のない家賃を先に決めておく考え方は、年金暮らしの家賃の目安|手取りから逆算する住まいの選び方で解説しています。
南部と北部で条件が変わる——岡山・倉敷と、津山・真庭
岡山県は、南部の瀬戸内海沿いに広がる岡山平野と、北部の中国山地とで、暮らしの条件がはっきり分かれます。賃貸の探し方も、この二つでは別ものと考えたほうが現実的です。
南部(岡山市・倉敷市など)は、県内で最も部屋の選択肢が集まるエリアのひとつです。岡山駅には山陽新幹線と、山陽本線・伯備線・津山線・宇野みなと線(瀬戸大橋線)・桃太郎線(吉備線)といった在来線が集まり、市内には岡山電気軌道の路面電車(東山線・清輝橋線)が走ります。通院や買い物を車に頼らずに済ませたい方には、この路面電車の沿線や岡山駅周辺が候補になりやすいところです。倉敷市は倉敷駅周辺、美観地区のある中心部、水島、児島とエリアごとに性格が違い、同じ市内でも家賃感や生活の便が変わります。
北部(津山市・真庭市・新見市など)は、津山盆地や中国山地の中にまちが点在し、冬に雪が積もる地域もあります。移動は車が前提になりやすく、免許を返納したあとの生活を考えるなら、バス路線や病院・スーパーとの距離を先に確認しておく価値があります。北部から南部へ移る住み替えのご相談は珍しくありません。
県境をまたいで考える方もいます。西隣で医療機関や商業が集まる広島県でシニアが賃貸を探すコツ|広島市・備後・呉で変わる住まい探しと比べてみると、同じ中国地方でも住宅ストックの厚みが違うことがわかります。子どもの近くに移るのか、いま住んでいる地域に留まるのかを決めてから物件を見はじめると、遠回りが減ります。
相談に行く前に整えておきたい3つのこと
1つめは保証の形です。頼める親族が近くにいない場合でも、家賃保証会社を使えば道はあります。「保証人不要」とうたわれている物件でも、実際には保証会社の審査を通す形がほとんどです。仕組みと費用の目安は保証人がいない高齢者の賃貸|家賃保証会社の使い方と選び方でご確認ください。
2つめはお金の見通しです。年金の受給額がわかる書類、預貯金の状況、退職金や資産の有無を、口頭ではなく紙で示せるようにしておくと、審査の場で話が早くなります。岡山県は持ち家率が高いので、実家を売却または賃貸に出して住み替える方も多く、その場合は入金の時期と契約の時期を合わせる段取りが要ります。
3つめは暮らしの支えの形です。近くに住む家族、通っている病院、介護保険サービス、見守りの仕組み——いずれかが用意されていることが伝わると、オーナーの不安は具体的に減ります。家族が動く場合の進め方は高齢の親の住み替え|家族が知っておく賃貸の進め方にまとめています。
岡山県の窓口——県と玉野市の2つの協議会、そして岡山市・倉敷市の扱い
国土交通省の住宅セーフティネット制度では、高齢者は「住宅確保要配慮者」に位置づけられ、入居を拒まない賃貸住宅(セーフティネット住宅)の登録、入居を支える居住支援法人の指定、関係者をつなぐ居住支援協議会という3つの仕組みが用意されています[6]。
国土交通省が公表している居住支援協議会の連絡先一覧(令和8年6月30日時点・全国192協議会)によると、岡山県内には岡山県居住支援協議会(事務局=公益社団法人岡山県宅地建物取引業協会・電話086-222-2131)と、玉野市居住支援協議会(玉野市都市計画課・電話0863-32-5544)の2つが掲載されています[7]。まずは県の協議会に連絡し、玉野市にお住まいなら市の窓口もあわせて確認する、という順序が使いやすいでしょう。
もう一つ、岡山県ならではの注意点があります。県のページによると、セーフティネット住宅の登録は「県内(岡山市、倉敷市の区域を除く)」を対象に県が行っています[8]。岡山市と倉敷市の物件は県の窓口の管轄外で、それぞれ岡山市役所 住宅課(086-803-1466)、倉敷市役所 住宅課(086-426-3531)が申請窓口です[8]。県内人口の多くがこの2市に集まることを考えると、多くの方に関係する分かれ目です。県の住宅課の電話は086-226-7527で、居住支援法人の一覧は岡山県居住支援協議会のホームページに掲載されています[8]。
まとめ:岡山は「母数が薄い前提で、備えてから、正しい窓口に当たる」
岡山県で高齢者・シニアが賃貸を探すときの要点は3つです。第一に、共同住宅31.7%・持ち家住宅率65.6%という構成から、募集に出ている部屋の母数がもともと厚くないと知っておくこと[1]。第二に、空き家率16.5%の内訳を踏まえ、空き家の多さを選択肢の多さと取り違えないこと[1]。第三に、保証・お金・暮らしの支えを整えたうえで、県の協議会か玉野市の協議会、そして岡山市・倉敷市なら市の窓口という、正しい入口に当たることです[7][8]。
高齢化がすでに進み、その状態が長く続くと見込まれる岡山県では、高齢の方の入居は特別なことではありません[3]。準備を整えて、順番に当たっていけば、住み替えられる部屋は見つかります。どこから手をつけるか迷われたら、まずはご相談ください。
- 岡山県の総住宅数95万5千戸・2018年91万6千戸から4.3%増、空き家数15万7千戸・空き家率16.5%、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家率8.6%、居住世帯のある住宅79万4千戸・一戸建52万3千戸(65.9%)・共同住宅25万2千戸(31.7%)・持ち家52万1千戸・持ち家住宅率65.6%、全国の総住宅数6504万7千戸・増加率4.2%・空き家率13.8%・一戸建52.7%・共同住宅44.9%・持ち家住宅率60.9%(いずれも2023年10月1日現在)、速報集計と確報集計で岡山県の空き家率が16.4%→16.5%と変わったこと:総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計 結果の概要』(付表 都道府県別の主な指標、参考2 速報集計と確報集計の関係)。stat.go.jp(PDF)
- 岡山県の空き家率 2023年16.4%・2018年15.6%、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家率 2023年8.6%・2018年8.0%、全国の空き家率 2023年13.8%・2018年13.6%(速報集計の値):総務省統計局『令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果』(2024年4月公表)。stat.go.jp(PDF)
- 岡山県の総人口183万1千人・65歳以上人口57万1千人・75歳以上人口33万7千人・65歳以上人口割合31.2%・75歳以上人口割合18.4%(令和6年=2024年)、令和32年(2050年)の65歳以上人口割合37.8%・高齢化率の伸び6.6ポイント、伸びの小さい県(島根県4.5・大分県6.1・熊本県6.2・福岡県6.5):内閣府『令和7年版高齢社会白書』第1章第1節「地域別に見た高齢化」表1-1-10。cao.go.jp
- 全国の65歳以上人口3,624万人・高齢化率29.3%(2024年10月1日現在):内閣府『令和7年版高齢社会白書』第1章第1節「高齢化の現状と将来像」。cao.go.jp
- 岡山県の一般世帯総数 2020年80万世帯→2030年82万3千世帯→2050年73万2千世帯(全国は2020年から2050年に5.6%減)、世帯主75歳以上の単独世帯 2020年6万4千世帯→2050年9万7千世帯、65歳以上人口における独居率 2020年18.9%→2050年25.8%、一般世帯総数に占める世帯主65歳以上の世帯の割合 2020年40.5%→2050年46.8%:国立社会保障・人口問題研究所『日本の世帯数の将来推計(都道府県別推計)』(2024年推計・2024年11月公表)概要 表Ⅱ-1・表Ⅱ-9・表Ⅱ-13・表Ⅱ-16-1。ipss.go.jp(PDF)
- セーフティネット住宅・居住支援法人・居住支援協議会の仕組み、住宅確保要配慮者に高齢者が含まれること:国土交通省『住宅セーフティネット制度』。mlit.go.jp
- 居住支援協議会の連絡先一覧に岡山県内として岡山県(事務局=(公社)岡山県宅地建物取引業協会・電話086-222-2131)と岡山県玉野市(玉野市都市計画課・電話0863-32-5544)の2件が掲載されていること、全国192協議会(令和8年6月30日時点):国土交通省『住宅確保要配慮者居住支援協議会について』掲載の連絡先一覧。mlit.go.jp(PDF)
- セーフティネット住宅の登録が「県内(岡山市、倉敷市の区域を除く)」を対象であること、居住支援法人の指定と支援内容、県住宅課の電話番号086-226-7527、居住支援法人一覧が岡山県居住支援協議会ホームページに掲載されていること(2026年7月24日更新の掲載内容):岡山県『住宅セーフティネット制度について』。pref.okayama.jp