高齢の親の賃貸に身元保証会社は必要?家賃保証との違いと契約前に確かめること

親の部屋探しで緊急連絡先の欄が埋まらないとき、「身元保証会社を使ってはどうか」とすすめられることがあります。ただ、調べると数十万円という金額が出てきて、手が止まる方は多いと思います。

まず押さえておきたいのは、賃貸の入居で求められるものと、身元保証会社が売っているサービスの範囲が、かなりずれているという点です。この記事では、2024年6月に国が示したガイドラインを原典から読み解きながら、確かめるべきところを整理します。

賃貸の入居に身元保証会社は必要なのか

法律に「賃貸を借りるには身元保証会社が要る」という定めはありません。求められるのは通常、次の3つです。

  • 家賃の支払いの担保——連帯保証人、または家賃保証会社
  • 緊急連絡先——万一のときに連絡がつく相手
  • 亡くなった後の手続き——部屋の明け渡しや残置物の片付け

身元保証会社はこの3つをまとめて引き受ける形で売られていますが、必要なのが1つだけなら、まとめて契約する理由はありません。どれが足りていないのかを先に切り分けてください。

立ち退きや更新拒絶をきっかけに転居先を探している場合は、退去期限の確定を先に済ませておくと準備の順番が決めやすくなります(高齢者の賃貸と立ち退き|更新を断られたときの期限・立ち退き料・次の部屋の探し方)。

身元保証と家賃保証は何が違うのか

混同されやすい2つですが、扱う中身が違います。

  • 家賃保証(家賃債務保証)——家賃が払われなかったときにお金を立て替える。お金の話に限られます
  • 身元保証——緊急時の連絡先を引き受ける、入院や施設入所の手続きを支える、亡くなった後の事務を行う。人が動く話です

国のガイドラインは、こうした事業を「高齢者等終身サポート事業」と呼び、提供されるサービスを主に「身元保証等サービス」「死後事務サービス」「日常生活支援サービス」の3つに分類しています[1]。家賃保証はここに含まれません。

家賃保証会社のしくみと選び方は保証人がいない高齢者の賃貸|家賃保証会社の使い方と選び方にまとめています。家賃の心配だけなら、そちらで足りることがあります。

身元保証サービスには何が含まれるのか

ガイドラインが対象としているのは、次の3つをすべて満たす事業者です[1]

  1. 「身元保証等サービス」及び「死後事務サービス」を提供するものであること
  2. 本人(契約者)と締結した契約に基づき、サービス提供するものであること
  3. 事業として継続的に提供するものであること

ここから分かるのは、身元保証だけを単体で売る形は想定されていないということです。多くの場合、死後事務までセットになります。

なお、弁護士・司法書士・行政書士など業法にもとづく規制がすでにある業種は、このガイドラインの対象外とされています[1]。同じような業務でも、相手が誰かによって規制の枠組みが変わる点は知っておいてよいところです。

費用はいつ払うのか——前払いしたお金はどう守られるのか

ここが実務でいちばん確かめるべきところです。ガイドラインは、この事業の課題として次の点を挙げています[1]

契約が長期にわたること、サービス提供に先行して一部費用が前払いされるなどのため契約内容の適正な履行を確認しにくいこと、判断能力の低下が懸念される高齢者を主な対象としているため、契約者の意思能力の有無等をめぐって事後的に争いが生じる可能性があること[1]

そのうえで、前払金(預託金)について事業者に望まれることを示しています[1]

  • 事業者自身の運営資金等とは明確に区分して管理すること
  • 利用者に定期的に管理状況を報告すること
  • 保全の方法としては信託銀行又は信託会社を相手方とする信託契約の利用が望ましいこと

そして注意書きが付いています。信託以外の方法(別法人への委託や分別預金)については、倒産隔離が効くとは限らず、事業者や別法人が破綻したときに利用者が十分な資金の還付を受けられない可能性がある点に留意を要する、と書かれています[1]

つまり「預かったお金をどう管理しているか」は、事業者ごとに違い、そこに差が出ます。数十万円を先に渡す契約なら、この一点は聞いておいて損がありません。

身元保証サービスのトラブルにはどんなものがあるか

国民生活センターは2019年5月30日に、この分野の契約トラブルについて注意喚起を出しています[2]。全国の消費生活センター等に寄せられた相談件数は次のとおりです[2]

  • 2013年度 85件/2014年度 99件/2015年度 177件/2016年度 127件/2017年度 74件/2018年度 101件

件数そのものは大きくありませんが、内容は「契約時に十分な説明がないまま契約してしまった」「解約時の返金額に納得できない」といった型に集まっています[2]。金額が大きく、契約期間が長く、解約の場面が本人の判断能力が落ちた後に来やすい——この組み合わせが問題を生みやすくしています。

国が示したガイドラインは事業者に何を求めているか

2024年(令和6年)6月、「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」が策定されました[1]。内閣官房(身元保証等高齢者サポート調整チーム)、内閣府 孤独・孤立対策推進室、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省の9者による共管です[1]。厚生労働省老健局も、同年6月11日付で自治体と関係団体へ周知しています[3]

ガイドラインは、この事業について「一般的な契約に比べ利用者保護の必要性が高い」と述べています[1]。契約の場面では、たとえば次のことが求められています[1]

  • あらかじめ利用者の意思能力を丁寧に確認したうえで契約を締結すること(民法第3条の2)
  • 提供するサービス内容や、利用者の判断能力が低下した場合の対応方針などを、本人との面談等を通じて丁寧に説明すること
  • それらを重要事項説明書として作成・交付すること

ここは利用する側の物差しになります。重要事項説明書が出てこない、本人ではなく家族とだけ話が進む、判断能力が落ちた後の対応が書かれていない——そうした場合は、ガイドラインが示す水準から離れていることになります。

緊急連絡先だけを頼みたいときはどうするか

ガイドラインには「緊急連絡先の受託等」という項目があり、事業者に次のことを求めています[1]

  • 緊急時に対応できる事項(土日・休日の対応体制等)とこれに要する費用について丁寧に説明すること
  • 事業者の連絡先を関係機関等に伝える方法を利用者と相談して定めておくこと(かかりつけ医・担当のケアマネジャーにあらかじめ知らせる、本人が身に着けておく、自宅内の分かりやすい位置に掲示しておく等)

「土日・休日の対応体制」が明記されている点に注目してください。緊急連絡先は平日日中だけつながっても意味が薄い場面があります。契約前に確かめる具体的な質問になります。

入居申込書の緊急連絡先の欄をどう埋めるかという実務面は、高齢者の賃貸の申込書と必要書類|年金の証明・本人確認・緊急連絡先の欄をどう埋めるかで扱っています。

緊急連絡先そのものをどう組み立てるかは身寄りがない高齢者の賃貸|緊急連絡先がいないときの進め方で、役割を4つに分けて整理しています。分けて考えると、有料の契約が要らない部分が見えてきます。

亡くなった後のことは誰が引き受けるのか

死後事務サービスについて、ガイドラインは賃貸に直結する項目を置いています。家屋等の賃貸借契約については「賃貸人に連絡し、残置物の整理のための必要な手続等を行うことが重要である」とされています[1]

また、委任を受けた事業者は、委任事務が終了した後は相続人に対し遅滞なくその経過及び結果を報告しなければならない(民法第645条)とされ、生前の本人の意思と相続人の希望が食い違った場合の対応にも触れています[1]

ここは大家側が最も気にするところなので、契約に含まれているかどうかは入居審査の材料にもなります。

契約する前に確かめること

ガイドラインから拾える確認事項を、質問の形にまとめます。

  1. 重要事項説明書は出ますか——書面で受け取り、本人が説明を受けたか[1]
  2. 前払金はどう管理していますか——信託か、分別預金か、別法人委託か[1]
  3. 管理状況の報告はありますか——定期的に受け取れるか[1]
  4. 土日・休日は連絡がつきますか——体制と、それに要する費用[1]
  5. 解約するときの返金はどうなりますか——トラブルが集まっている場面です[2]
  6. 判断能力が落ちた後はどう対応しますか——方針が説明されるか[1]

6つとも、答えられて当然のことばかりです。言葉を濁されたら、それ自体が判断材料になります。

まとめ:公的な受け皿を先に当たってから決める

有料の契約を検討する前に、公的な側にも受け皿があります。2025年10月1日に施行された改正住宅セーフティネット法では、日常の安否確認、訪問等による見守り、生活や心身の状況が不安定化したときの福祉サービスへのつなぎを行う住宅として「居住サポート住宅」の認定制度が始まりました[4]。地域には居住支援法人という相談先もあります[4]

制度の中身と、入居する側から見た支援内容は居住サポート住宅とは?入居する側から見た支援内容とサ高住・登録住宅との違いにまとめました。見守りだけを補いたい場合は、R65見守りのような安否確認のサービスを個別に付ける方法もあります。

その見守りを誰が契約し、費用を誰が負担し、異変のとき誰に連絡が届くのかは高齢者の賃貸と見守りサービス|誰が契約し、費用は誰が払い、誰に連絡が届くのかにまとめています。

身元保証会社が悪いという話ではありません。必要な部分だけを、内容と費用の管理を確かめたうえで契約する。そのために、まず「何が足りていないのか」を切り分けるところから始めてください。

出典
  1. ガイドラインの名称・策定時期(令和6年6月)と共管府省庁(内閣官房〈身元保証等高齢者サポート調整チーム〉、内閣府 孤独・孤立対策推進室、金融庁、消費者庁、総務省、法務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省)、事業の3分類(身元保証等サービス/死後事務サービス/日常生活支援サービス)、対象となる事業者の3要件、弁護士・司法書士・行政書士等が対象外であること、「一般的な契約に比べ利用者保護の必要性が高い」との記述、「サービス提供に先行して一部費用が前払いされる」等の課題、意思能力の確認(民法第3条の2)と重要事項説明書の作成・交付、前払金(預託金)の区分管理・定期報告・信託による保全、および信託以外の方法では倒産隔離が効くとは限らず破綻時に十分な資金の還付を受けられない可能性がある旨、緊急連絡先の受託等における土日・休日の対応体制と費用の説明・関係機関への連絡先の伝達方法、死後事務における「賃貸人に連絡し、残置物の整理のための必要な手続等を行うことが重要である」、相続人への報告義務(民法第645条):内閣官房ほか「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(令和6年6月)。moj.go.jp(PDF)(2026年9月2日確認)
  2. 公表日(2019年5月30日)、全国の消費生活センター等に寄せられた相談件数(2013年度85件/2014年度99件/2015年度177件/2016年度127件/2017年度74件/2018年度101件)、契約時の説明不足および解約時の返金をめぐるトラブルの類型:独立行政法人国民生活センター「身元保証などの高齢者サポートサービスをめぐる契約トラブルにご注意」。kokusen.go.jp(2026年9月2日確認)
  3. 「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」の策定について、令和6年6月11日付で都道府県・市町村の介護保険担当課および介護保険関係団体へ周知されたこと:厚生労働省老健局 高齢者支援課・認知症施策・地域介護推進課・老人保健課「介護保険最新情報 Vol.1273」。mhlw.go.jp(PDF)(2026年9月2日確認)
  4. 2025年10月1日施行の改正住宅セーフティネット法、居住サポート住宅が日常の安否確認・訪問等による見守り・生活や心身の状況が不安定化したときの福祉サービスへのつなぎを行う住宅として認定される制度であること、居住支援法人の位置づけ:国土交通省「住宅セーフティネット制度について」。mlit.go.jp(2026年9月2日確認)

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