ケアマネが利用者の賃貸探しを手伝うとき|どこまで関わるか・不動産会社に伝えること・緊急連絡先の整理

担当しているひとり暮らしの利用者が、建物の取り壊しで立ち退きを求められた。家賃の負担が重くなり、もっと安い部屋へ移りたいと言い出した。入院をきっかけに、今の部屋へは戻れそうにない——。ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員が、利用者の「次の住まい」の相談を最初に受ける場面は少なくありません。

そのとき多くの方が迷うのが、「部屋探しは介護保険のサービスではない。どこまで手を出してよいのか」という線引きです。この記事は、利用者の賃貸探しを支える専門職の方に向けて、介護保険法と居宅介護支援の運営基準、住宅セーフティネット法、国土交通省の調査から、自分が担うこと・ほかの窓口に渡すこと・不動産会社に最初に伝えることを整理したものです。

先に結論を書くと、ケアマネジャーが部屋探しそのものを抱え込む必要はありません。住まいの課題をケアプランの視野に入れ、地域包括支援センター・居住支援法人・高齢者の入居に慣れた不動産会社へ「必要な情報をそろえて渡す」ことが、利用者にとってもいちばん早い道になります。

ケアマネジャーは利用者の部屋探しをどこまで手伝えるのか

居宅介護支援の運営基準(指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準)は、ケアプラン(居宅サービス計画)の作成について、「利用者の日常生活全般を支援する観点から、介護給付等対象サービス(中略)以外の保健医療サービス又は福祉サービス、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等の利用も含めて居宅サービス計画上に位置付けるよう努めなければならない」と定めています(第13条第4号)[1]

部屋探しや賃貸借契約の手続きは、介護保険の給付の対象となるサービスではありません。一方でこの規定は、介護保険の外にある支援も含めて、利用者の生活全体を見渡すことをケアマネジャーに求めています。住まいを失いかけている状況は、まさに「日常生活全般」の土台にかかわる課題です。

そこで実務上は、次のように分けて考えると線が引きやすくなります。

  • ケアマネジャーが担いやすいこと:住まいの課題を把握してケアプランの視野に入れる/相談先へつなぐ/転居後の介護サービスの継続を調整する/本人の同意を得たうえで、生活の様子を相談先に伝える
  • ほかの窓口に渡したほうがよいこと:物件の紹介や内見の手配、家賃保証や契約条件の交渉、緊急連絡先や保証人の引き受け

どこまでを業務として行うかは、所属する事業所の方針によっても変わります。迷ったときは、ひとりで判断せず事業所の管理者と相談し、「つなぐ」ところまでをしっかり担うと考えると、利用者も自分も守りやすくなります。

地域包括支援センターに、利用者の住まいの相談をつないでよいのか

つないで構いません。介護保険法は、市町村が行う包括的支援事業の一つとして、「被保険者の心身の状況、その居宅における生活の実態その他の必要な実情の把握、保健医療、公衆衛生、社会福祉その他の関連施策に関する総合的な情報の提供、関係機関との連絡調整その他の被保険者の保健医療の向上及び福祉の増進を図るための総合的な支援を行う事業」を挙げています(第115条の45第2項第1号)[2]。地域包括支援センターは、この包括的支援事業などを実施し、「地域住民の心身の健康の保持及び生活の安定のために必要な援助を行う」施設と位置づけられています(第115条の46第1項)[2]

住まいは「生活の安定」の中心です。地域包括支援センターは、地域の居住支援協議会や自治体の住宅部局、生活困窮の相談窓口とのつながりを持っていることが多く、ケアマネジャー個人では探しにくい地域の資源を一緒に探せます。家賃の支払いが難しくなっている場合の公的な相談先は高齢の親の家賃が払えなくなったとき|滞納から退去までに何が起きるか・保証会社の督促・先に相談できる窓口で、生活保護を受けている利用者の住宅扶助の扱いは生活保護で高齢者が賃貸を借りるには|住宅扶助の上限と入居審査の実際で整理しています。

居住支援法人は何をしてくれるのか——ケアマネジャーとの役割分担

住宅セーフティネット法は、都道府県知事が指定する居住支援法人の業務として、次のものを定めています(第62条)[3]

  • 登録事業者からの要請にもとづく、登録住宅の入居者の家賃債務の保証(第1号)
  • 住宅確保要配慮者に対する、賃貸住宅への円滑な入居の促進に関する情報の提供、相談その他の援助(第2号)
  • 賃貸住宅に入居する住宅確保要配慮者に対する、生活の安定及び向上に関する情報の提供、相談その他の援助(第3号)
  • 賃貸住宅の賃貸人に対する、必要な情報の提供(第4号)
  • 賃借人からの委託にもとづく、死亡した場合の賃貸借契約の解除や、残された家財の保管・処分などの処理(第5号)

つまり居住支援法人は、入居前の部屋探しの相談から、入居後の生活の相談、さらには亡くなった後の契約の後始末までを業務として担える存在です。ケアマネジャーが「自分がやるべきか」と悩みやすい部分の多くは、ここに渡せます。

また国土交通省は、居住支援法人等が大家さんと連携し、「[1]日常の安否確認、[2]訪問等による見守り、[3]生活・心身の状況が不安定化したときの福祉サービスへのつなぎを行う住宅」居住サポート住宅として示しています[4]。福祉サービスへのつなぎが住宅の側に組み込まれているため、ケアマネジャーとの連携を前提にした住まいといえます。入居する側から見た内容は居住サポート住宅とは?入居する側から見た支援内容とサ高住・登録住宅との違いで詳しく扱っています。

地域の居住支援法人は、都道府県ごとに指定されています。どの法人が近くで活動しているかは、地域包括支援センターや自治体の住宅部局に尋ねると早く分かります。

大家さんは高齢の入居者の何を心配しているのか

不動産会社に何を伝えるかを考える前に、貸す側が何を不安に思っているかを知っておくと、準備の的が絞れます。

国土交通省の調査(令和3年度・公益財団法人日本賃貸住宅管理協会の会員を対象、回答者数187団体)では、高齢者に対して約7割の賃貸人が拒否感を有しているとされています。さらに、入居制限を行っている団体(回答数76団体)に最も該当する理由を尋ねると、高齢者の場合は「居室内での死亡事故等に対する不安」が約9割でした[5]

不動産会社の側の実感も同じ方向を向いています。全国宅地建物取引業協会連合会が全国の宅建業者・管理業者に行った実態調査をまとめた資料(令和2年8月、厚生労働省「住まい支援の連携強化のための連絡協議会」提出資料)は、高齢者への入居斡旋を阻害するリスク要因として「孤独死」が最多だったと整理しています[6]。同じ資料には、業者側の意見として「病院やケアマネージャー、行政などといろいろな方法でコミュニケーションをとっていれば対応できる」という声も記録されています[6]

大家さんや不動産会社が心配しているのは、年齢そのものよりも、「何かあったときに、誰が気づき、誰に連絡がつくのか」です。そして、この問いに具体的に答えられるのは、日ごろ利用者の生活を見ている専門職です。

不動産会社に最初に何を伝えればいいのか

最初の問い合わせで、次の点を本人の同意を得たうえで簡潔に伝えると、受け入れられる部屋があるかどうかの見通しが早く立ちます。

  • 転居が必要な理由と時期:立ち退き・家賃の負担・退院など。退去の期限があれば日付も
  • 家賃の払い方:年金などの収入の種類と、口座からの引き落としにできるか。家賃債務保証会社の利用に抵抗がないか
  • 日ごろの支えの体制:訪問介護やデイサービスの頻度、ケアマネジャーの関与、近くに住む家族の有無
  • 異変に気づく仕組み:定期的な訪問の有無、見守りサービスを使う意向があるか
  • 緊急時の連絡先の見込み:家族がいるか、いなければどこに相談しているか
  • 部屋の条件:階段の上り下りができるか、車いすや歩行器を使うか、通院先やデイサービスの送迎範囲

ポイントは、「できないこと」より先に「支えがあること」を伝えることです。前の節のとおり、貸す側の不安は「異変に誰が気づくか」に集まっています。サービスの頻度や関わっている人を具体的に示すと、それ自体が審査の材料になります。

申込書の書き方や、年金の証明に使う書類は高齢者の賃貸の申込書と必要書類|年金の証明・本人確認・緊急連絡先の欄をどう埋めるかにまとめています。認知症の診断がある利用者の場合、契約を本人名義で結べるかという別の論点があり、認知症の親の賃貸契約|本人名義で結べるか・家族が代われるか・成年後見が必要になる場面で扱っています。

担当の利用者の転居先を、高齢の方の入居を前提に相談できる窓口に、専門職として問い合わせる——利用者の状況を先に伝えたうえで、入れる部屋の見込みから一緒に確かめられます。

ケアマネジャーは緊急連絡先や保証人になれるのか

申込みの段階で、「緊急連絡先の欄にケアマネさんの名前を書いてもいいですか」と聞かれることがあります。ケアマネジャーが個人として緊急連絡先や保証人を引き受けるかどうかを定めた法令はなく、実際には所属する事業所の方針で判断することになります。

判断の前に考えておきたいのは、次の2点です。

  • 担当が替わったときにどうなるか:賃貸借契約は何年も続きます。異動や退職、担当の交代があっても、契約書の緊急連絡先は自動では書き換わりません
  • 連絡を受けて何ができるか:夜間や休日の連絡、入院時の荷物の対応、亡くなったときの家財の扱いなど、緊急連絡先に求められることは介護の支援の範囲を超えやすい

このため、個人で引き受ける前に、制度として引き受けられる先を探す順番が現実的です。前に挙げた居住支援法人は、入居中の相談や、委託を受けて亡くなった後の契約解除・家財の処理を業務としています[3]。家賃債務保証会社の中には、緊急連絡先がいない人向けのサービスを用意しているところもあります。身寄りがない場合の進め方は身寄りがない高齢者の賃貸|緊急連絡先がいないときの進め方で、身元保証会社を使うかどうかの判断は高齢の親の賃貸に身元保証会社は必要?家賃保証との違いと契約前に確かめることで詳しく扱っています。

利用者の情報を、不動産会社や大家さんにどこまで伝えてよいのか

住まい探しを手伝ううえで、利用者の個人情報の扱いは最初に確認しておきたい点です。運営基準は、ケアマネジャーその他の従業者は「正当な理由がなく、その業務上知り得た利用者又はその家族の秘密を漏らしてはならない」と定め(第23条第1項)、サービス担当者会議等で利用者の個人情報を用いる場合は利用者の同意を、あらかじめ文書により得ておかなければならないとしています(同条第3項)[1]

不動産会社への相談は、サービス担当者会議とは別の場面です。それでも、誰に・何を・どこまで伝えるかを本人と先に決め、同意を得てから伝える姿勢は変わりません。実務では、次のような線引きがしやすいでしょう。

  • 伝えてよいか本人に確かめる:要介護度、利用しているサービスとその頻度、通院の状況
  • 原則として伝えない:病名や診断の詳細、家族関係の事情など、部屋を借りることに直接かかわらない情報

不動産会社に伝えるのは、「この部屋で暮らし続けるために、どんな支えがあるか」が分かる範囲で十分です。

入居後の見守りを、大家さんにどう示すか

大家さんの不安の中心が「異変に気づけるか」である以上、入居後の見守りの形を申込みの段階で示せると、話が進みやすくなります。訪問介護やデイサービスの予定は、利用者の生活の様子が定期的に誰かの目に触れていることを示す材料になります。そのうえで、サービスが入らない日や夜間をどう見るかを補えるのが、見守りの仕組みです。

見守りサービスは、誰が契約し、費用を誰が払い、通知が誰に届くかで使い勝手が大きく変わります。選び方は高齢者の賃貸と見守りサービス|誰が契約し、費用は誰が払い、誰に連絡が届くのかで整理しています。

サービスが入らない日の様子も、関係者に届く形にしておく——申込みのときに、大家さんへ伝えられる備えの一つになります。

まとめ:部屋探しを抱え込まず、「支えの体制」をそろえて渡す

  • 運営基準は、介護保険の外にあるサービスや地域の活動も含めてケアプランに位置付けるよう努めるとしている(第13条第4号)[1]。住まいの課題は視野に入れてよい
  • 地域包括支援センターは総合的な相談と関係機関との連絡調整を担う(介護保険法第115条の45第2項第1号・第115条の46第1項)[2]
  • 居住支援法人は入居前の相談・入居後の生活の相談・死亡後の契約解除や家財の処理まで業務にできる(住宅セーフティネット法第62条)[3]。居住サポート住宅は福祉サービスへのつなぎを組み込んだ住宅[4]
  • 高齢者に対して約7割の賃貸人が拒否感、入居制限の最も該当する理由は「居室内での死亡事故等に対する不安」が約9割(令和3年度・国土交通省調査)[5]
  • 不動産会社には、本人の同意を得て「支えがあること」から先に伝える
  • 緊急連絡先・保証人は、個人で引き受ける前に制度として引き受けられる先を探す
  • 利用者の情報は本人と伝える範囲を決め、同意を得てから(運営基準第23条)[1]

住まいが決まれば、介護サービスも生活のリズムも、新しい場所で組み立て直せます。ケアマネジャーが「つなぐ役」を担うことで、利用者の次の暮らしは落ち着いて始められます。家族と一緒に住み替えを進める場合の全体の流れは高齢の親の住み替え|家族が知っておく賃貸の進め方も参考にしてください。

出典
  1. 第13条第4号「介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成に当たっては、利用者の日常生活全般を支援する観点から、介護給付等対象サービス(法第二十四条第二項に規定する介護給付等対象サービスをいう。以下同じ。)以外の保健医療サービス又は福祉サービス、当該地域の住民による自発的な活動によるサービス等の利用も含めて居宅サービス計画上に位置付けるよう努めなければならない。」、第23条第1項(秘密保持)・第3項(個人情報を用いる場合の文書による同意):e-Gov法令検索『指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準』(平成11年厚生省令第38号)https://laws.e-gov.go.jp/law/411M50000100038
  2. 第115条の45第2項第1号(総合的な支援を行う事業)、第115条の46第1項(地域包括支援センターの目的):e-Gov法令検索『介護保険法』(平成9年法律第123号)https://laws.e-gov.go.jp/law/409AC0000000123
  3. 第62条(支援法人の業務)第1号〜第6号:e-Gov法令検索『住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律』(平成19年法律第112号)https://laws.e-gov.go.jp/law/419AC1000000112
  4. 居住サポート住宅を「居住支援法人等(※)が大家と連携し、[1]日常の安否確認、[2]訪問等による見守り、[3]生活・心身の状況が不安定化したときの福祉サービスへのつなぎを行う住宅」と説明していること:国土交通省『住宅セーフティネット制度』https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000055.html
  5. 住宅確保要配慮者の入居に対する賃貸人(大家等)の意識として「高齢者に対して約7割が拒否感」、入居制限を行う「最も該当する理由」は高齢者の場合「居室内での死亡事故等に対する不安」が約9割とされていること〔出典:令和3年度国土交通省調査/(公財)日本賃貸住宅管理協会の賃貸住宅管理業に携わる会員を対象(回答者数:187団体)、入居制限の理由は入居制限を行っている団体が対象(回答数:76団体)〕:国土交通省 社会資本整備審議会 資料2https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001708224.pdf
  6. 「高齢者への入居斡旋を阻害するリスク要因として「孤独死」が最多」、研究会での意見として「病院やケアマネージャー、行政などといろいろな方法でコミュニケーションをとっていれば対応できる。」と記載されていること:(公社)全国宅地建物取引業協会連合会『住宅確保要配慮者への居住支援の取組みについて』(R2.8.3 第1回 住まい支援の連携強化のための連絡協議会 資料17・厚生労働省掲載)https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/000656706.pdf

出典URLはいずれも2026年9月20日に閲覧し、掲載内容を確認しています。条文は同日時点のe-Gov法令検索の掲載によります。ケアマネジャーがどこまで住まい探しに関わるか、緊急連絡先を引き受けるかは、所属する事業所の方針と自治体の運用によって異なります。居住支援法人の活動内容は法人ごとに異なるため、お住まいの地域の窓口でご確認ください。

担当の利用者の転居先についてのご相談

立ち退きや家賃の負担、退院などで、担当している高齢の方が住まいを探す必要に迫られている——。ケアマネジャー・地域包括支援センターなど支援者の方からのご相談も承ります。利用者の状況を先に伺ったうえで、高齢の方の入居に前向きな窓口におつなぎします。